文明研究専攻(博士課程<前期・後期>)

大学院においては、学部における基礎的教育の上に、より専門性の高い教育内容が提供されるのは当然のことである。しかしながらこのことは、必ずしも狭い範囲の専門領域にのみ関心を有する専門家を養成することではない。優れた専門家はその専門性の高みに比例する視野の広がりを有しているものである。文明研究専攻の教育の基本的な姿勢は、教育内容の専門性の水準を堅持するとともに、視野の広がりを促すことにある。

文明研究専攻の博士課程前期では、文明理論、比較文明論、科学論・技術論、科学史・技術史の諸科目やアジア文明、ヨーロッパ文明、アメリカ文明、日本文明の各地域文明に関する諸科目を配し、それぞれの領域を専門とする教員が、講義と演習の授業を通じて専門的な教育を行う。これらの授業では、文明学の方法論・理論に関連するテーマとともに、思想、文化、言語、芸術、宗教、民族、社会、歴史など、個別の各分野におけるさまざまな問題がテーマとして取り上げられる。

このような多様なテーマで行われる授業は、専門性の高い内容であるとともに、各々の分野における新しい課題や論点を常に取り入れつつ行われるので、毎学期同一の内容で繰り返し取り扱われるとは限らない。したがって、各学期ごとに開講される科目によっては、研究者としてまず学ばなければならない、内外の先学たちによって築き上げられてきた根本的な理論を理解する機会となるであろうし、斬新な学問的試みに啓発されることもあるに違いない。あるいは実証的な研究の方法を修得する機会や、個々に大学院生が進めつつある研究の中間的な成果を発表し、教員と大学院生の批評を得る機会ともなるであろう。大学院生はこれらの講義・演習に参加するとともに、各自の研究テーマにしたがい、研究指導教員の指導のもとで、先行する研究の批判と吸収、資料の収集・分析を計画的に積み重ね、修士論文の執筆を当面の目標として研究を進める。

博士課程後期では、博士課程前期において修得した研究上の方法と知識を前提として、より高度な研究を行う能力を身につけるために、文明理論研究・演習、文明研究・演習、現代文明論研究・演習、文明研究法の諸科目が配されている。博士課程後期生も研究指導教員の指導のもとで、各自の研究テーマに関して研究を進めていくが、特定の研究領域の専門家としての強固な土台を形作るために、自らの専門性を深め、研究者としての主体性を確立することを目標とする。

文明研究専攻が養成しようとする人材

文明研究専攻では、大学院生が各自の研究テーマについて専門的な研究を進めるのはもちろん、狭い専門領域に閉じこもることなく、常に複眼的な視野を獲得するよう指導し、特定地域の文明や、特定の文明的な問題を研究対象とする場合にも、個々の地域や問題を越えた文明論的な視座から捉える能力を養成することを目標としている。そのために、本研究専攻では、大学院生が各々の研究領域において個々人で研鑽を積み重ねるとともに、大学院生および教員が、同一の研究領域の範囲に止まることなく、領域を越えて自由な意見の交換をすることを重んじ、研究者としての視野の広さを保つことを重視している。

科学技術の急速な発展、流動的な内外の政治・社会情勢など、かつてない速度で変化を遂げつつある現代社会においては、機敏にその変化に対応し、また同時に揺らぎのない視点を有する人材が必要とされている。本研究専攻では、博士課程前期・後期を通じて、所属する大学院生に対し、高度の専門的能力・知識を有する、自立した研究者として求められる基礎的な力を修得させるとともに、そのような専門家としての確固とした足場を持ちつつ、広い視野をも兼ね備えた、優れた社会人として現代社会の中で自らの持てる能力を十二分に生かし得る人材の養成を目標としている。

上記の目標を達成するため、文明研究専攻では以下の各項目を実現させる。

  1. (1)博士課程前期および後期に拘わらず在籍する大学院生全体の研究発表会を年に1回開催し、教員、大学院生の全員による批判、検討の場とする。
  2. (2)文明研究専攻内に組織されている文明学会の会誌『文明研究』への大学院生の投稿を積極的にすすめ、在籍中に少なくとも一度は研究論文、研究ノートに類する研究報告が掲載されるよう指導する。
  3. (3)博士課程後期に在籍する大学院生が、在籍中少なくとも一度は然るべき学会において研究発表できるよう指導する。