バイオサイエンス学科の永井教授が開発に協力したAGEsの体内蓄積レベルを測定できる「AGEsセンサ」の新製品発表会が開催されました

農学部バイオサイエンス学科の永井竜児教授がシャープライフサイエンス株式会社と共同で開発してきた、AGEs(最終糖化産物)の体内蓄積レベルを測定できる「AGEsセンサ」がこのほど完成しました。8月4日に大阪市内で開かれた同社による報道陣向けの新製品発表会で、永井教授がAGEsについて講演を行いました。

AGEsは日常生活で糖分を過剰に摂取することでタンパク質が糖化してできる物質で、糖尿病のほか認知症やがん、高血圧、動脈硬化症にも関与します。今回開発された測定装置では、手の指先にある特定の波長の光を当てることでAGEsの自家蛍光現象を利用し、皮膚のAGEs量を測定します。血液検査など皮膚内や体の開口部に器具を挿入せず(非侵襲的)に体内のAGEsの蓄積レベルを数値化できるようになりました。使用に際しては、左手中指の先を測定部に挿入し30秒から60秒の短時間でAGEsの蓄積レベルを簡単に測定できます。数値はスコア化されA~Eの5段階評価で表されるほか、同世代と相対比較した順位(1~100位)が目安として示されます。また、付属のプリンタで測定結果を印字し、次回以降の測定時に結果を比較することも可能です。美容や健康食品、ヘルスケア、医療など幅広い分野での活用のほか、将来的には糖尿病合併症などの早期発見への応用も期待されています。

永井教授は約7年前からシャープとの共同研究に着手しており、同社で機器開発を担当し本学大学院生物科学研究科(博士課程)を修了した山中幹宏氏とともに、測定の際に血管に当てる波長の選定や動物試験による機能検証などに取り組んできました。また、熊本大学医学部附属病院など臨床の現場でのデータも蓄積してきました。

発表会ではまず、シャープライフサイエンス副社長の北村和也氏が同社の概要と新製品を軸とした商品展開について紹介。続いて山中氏がセンサの特徴や開発の経緯について説明しました。ゲストとして登壇した永井教授は、「AGEsの測定機器は約15年前にヨーロッパから日本に入ってきていましたが、メラニン色素の影響を受けやすく、アジアに多い黄色人種では正確な値が測れませんでした。開発にあたっては、日本人に合った蛍光の波長を選定するとともに、測定部位としてメラニン色素の少ない指先に着目し、クリップで指先を挟んで固定することで測定時に体が動いてしまう問題にも対応しています」と研究開発の詳細を明かし、「糖質の代謝異常によってAGEsの生成が進むことが分かっており、動脈硬化などの血管疾患は一度かかってしまうと完全な治癒は難しいことから予防が重要になります。AGEsを簡便に測れる今回のセンサが普及することで、医療機関のみならずスポーツセンターや公民館などで手軽に測定が可能となります。生活習慣病の効果的な対策が可能になるよう、いち早い気づきや意識向上につながれば」と期待を語りました。

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