電気電子工学科の遊部教授が電子情報通信学会のエレクトロニクスソサイエティ賞を受賞しました

工学部電気電子工学科の遊部雅生教授が9月21日に、電子情報通信学会のエレクトロニクスソサイエティ賞を受賞しました。同賞は、エレクトロニクスに関する新しい発明、理論、実験、手法などの研究における学問的分野への貢献や産業的業績が明確であるものに贈られています。遊部教授は、日本電信電話株式会社(NTT)と共同で取り組んでいる「周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路を用いた位相感応増幅器の先駆的研究」が高く評価されて受賞しました。

光通信技術は1990年代から広く普及し、現代のインターネット社会を支える重要な基盤としての役割を果たしています。その通信は、光ケーブル内にレーザーを通すことで行われていますが、100m通信すると100分の1程度まで光が弱くなってしまう(減衰)ため、「光増幅器」を使って中継し、光を再度強める(増幅)必要があります。その一方で、現在の増幅技術ではノイズが多く発生してしまい、大容量のデータを送ると誤送信を招く危険性が高まる欠点がありました。

遊部教授らはその解決策として、ニオブ酸リチウムを材料にした新しい「導波路」を開発。これを組み込んだ「位相感応光増幅器」を製造し、これを複数用いた長距離通信実験を世界で初めて成功させました。さらに、ノイズがほとんど発生せず、かつ変換効率の高い増幅にも成功しました。光信号を増幅する技術の開発は他にも数多く行われていますが、この増幅システムは、すでに広く用いられている材料を応用しており、大規模なインフラ工事を必要とせずに導入できるなど、低コストでの通信システムの充実に貢献できると期待されています。

遊部教授は、「この方式はこれまで理論的には証明されていましたが、実際の機器を開発できたことで、技術の実用化に向けた大きな一歩を踏み出せたと考えています。ビックデータの利用をはじめ、データ通信インフラの充実がさらに重要になっている中、現在の通信技術ではデータ通信容量の限界が明らかになっています。研究室では現在、1つのケーブルを使ってより多くの信号を送る多値信号の増幅技術開発も進めており、今後もさらに研究を重ねていきます」と話しています。

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