工学部研究会「冶金・金属研究会」の講演会を開催しました

工学部では11月11日に湘南キャンパスで、工学部研究会「冶金・金属研究会」の講演会を開催しました。本学部では、研究者間の交流を促し研究力の向上につなげることを目的に、教員による自主的な研究グループを支援する助成事業「工学部研究会」を実施しています。このうち冶金・金属研究会(代表:工学部材料科学科・宮澤靖幸教授)は、冶金や金属材料にかかわる学内外の専門家の意見交換の場として昨年度から活動。今回は、古代の粒金の加工技術について研究している大橋修教授(東京理科大学)とエジプト考古学が専門の山花京子准教授(文学部アジア文明学科)、金細工工芸家の手塚厳氏、試料にほとんど傷をつけずに金属の性質を分析する「マイクロサンプリング技術」を取り扱っている株式会社マイクロサポートの前林利典氏が講師を務めました。

講演では最初に大橋教授が「粒金・古代の金のマイクロ接合」と題して、紀元前2500年ごろに西アジアで誕生した粒金の細工の特徴と技術伝播の歴史、製造方法について資料を用いて紹介。韓国に残っている金細工の装飾品を分析した結果を踏まえつつ、「産業構造の変化によって文化が伝承されず、技術が途絶えてしまったものが多い。その技術を再現することはきわめて困難だが、それだけにやりがいもある。金や銀、銅などの加工技術を研究するためには、燃料として用いられた木炭にも注目する必要がある」と語りました。その後、山花准教授が「古代の粒金装飾と拡散のテクノロジー」のテーマで、古代の粒金装飾技術について現在提唱されているさまざまな学説を解説。前林氏は、「工業製品の異物分析や局所構造の分析に効果を発揮してきたこの技術が、文化財資料の年代測定や材料調査、ミクロ領域における修復作業への活用が期待される」とし、技術の特徴と具体的な方法を解説しました。

宮澤教授は、「冶金や金属をキーワードに、工学のみならず文学や体育学など幅広い分野の研究者、行政・企業の担当者、芸術家などが人と人のつながりを築く機会をつくりたいと思い、この研究会をスタートさせました。昨年に続き2度目の研究会ですが、互いの長所を生かした有益な意見交換を通して、今後につながるネットワークもできたと実感しています。これまでの産官学連携には、官が提供した資金を企業と大学が使うという固定した構図がありましたが、これからはそれぞれの持つ専門性や強みを生かしていくことが大事だと考えています。そのためには互いの信頼が何よりも欠かせません。今後もこの研究会を通じて、新たな産官学連携の基礎をつくっていきたい」と話しています。

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