光・画像工学科の学生が執筆した論文が『日本画像学会誌』に掲載されました

工学部光・画像工学科4年次生の片野未咲子さん(指導教員=前田秀一教授)が執筆した論文「ハンセン溶解度パラメーターと浸漬仕事を指標としたカポック繊維への機能性材料内包方法の最適化」が、10月10日付で刊行された『日本画像学会誌』(発行=日本画像学会)に掲載されました。画像分野ならびに画像関連分野に関する研究報告が掲載される学術誌で、年6回刊行されています。片野さんは、6月20日から22日まで開催された同学会の年次大会で研究成果を発表。学会の編集委員会から学会依頼論文としての執筆を依頼されました。

片野さんは、常緑樹「カポック」の繊維が中空になっている性質を利用し、発光性や温度によって変色する性質を持つインクなどを内包させて機能性材料を作る技術の研究に取り組んでいます。通常物質同士が混ざったり、しみ込んだりするには双方の分子がある程度似た性質を持っている必要があります。それを予測する指標の一つが、ハンセン溶解度パラメーター(HSP)と呼ばれるものです。片野さんは、機能性材料とそれを溶かす溶媒のHSP値を調べた実験結果をシミュレーションソフト「HISPIP」に入力し、カポック繊維への溶けやすさを予測する手法を確立。これまでこの分野の研究では、機能性材料と溶媒の組み合わせをすべて実験して確認しなければならなかったという課題を解決し、研究効率の飛躍的な向上を可能にしました。

片野さんは、「学部生のうちに実験計画から論文執筆までのすべての段階を経験できるという貴重な経験ができ、大きな達成感と自信を得られました。この学科では、光学と画像に関する基礎知識が学べるだけでなく、4年間かけて実験の進め方やリポート作成方法、プレゼンテーション力など技術者に欠かせない力が身につくと思っています。今回の論文を投稿できたのもそうした素地があったからこそ。カポック繊維の研究は、これまで世の中になかった新しい材料を生み出せる点で大変魅力的な分野です。卒業までの期間で、新たな機能性材料の可能性を探りたい」と話しています。

前田教授は、「カポック繊維はこれまでにもクッションや救命袋の詰め物に使用されてきましたが、水に浮くほど軽くしかも強いことから紙幣の偽造防止に生かせる新素材として各国で研究が進められています。研究室ではこれまでにも、繊維内に発光材料などさまざまな材料を内包させる技術の開発に取り組んでおり、今後も学生とともに社会の役に立つ新たな可能性を探っていきたい」と話しています。

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