「MHC統御カニクイザルの有用性評価と計画生産の検討」について共同研究契約を締結しました

東海大学は5月27日、「MHC統御カニクイザルの有用性評価と計画生産の検討」を研究テーマとして、国立大学法人滋賀医科大学、慶應義塾大学、株式会社 イナリサーチと共同研究契約を締結しました。この研究は独立行政法人科学技術振興機構(以下「JST」)の平成25年度「研究成果最適展開支援事業(A- STEP)【産学共同促進】ステージ シーズ育成タイプ」に採択されているものです。

共同研究期間は2018年11月30日までを予定しており、イナリサーチがJSTへの報告や予算管理も含めた課題全体を統括。本学が研究全般の統括を担当 し、各大学が役割を分担して研究を進めていきます。本学は医学部医学科基礎医学系の椎名隆准教授を研究責任者とし、DNAタイピング法の開発とその検証お よびMHCホモ接合体における遺伝学的・免疫学的解析と情報の収集を行います。

現在、iPS細胞技術を用いた再生医療およびがん・感染症といった疾患研究などにおいて、移植拒絶の緩和は大きなテーマとなっています。ヒトの臓器移植に おいて、ドナーと移植希望者との間の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の型を一致させることは拒絶反応回避のために重要な要素です。また、特定のMHC 型が特定の薬剤副作用と関連することが明らかとされ、疾病治療時の薬剤選択に先立って患者のMHC型を調べるケースも増えてきています。一方、カニクイザ ルはヒトに近い霊長類であり、昨今のヒトでの外傷(損傷)や疾患などで機能喪失した組織、臓器などの再生医療研究におけるiPS/ES細胞の基礎研究から 臨床研究への橋渡し研究への利用が期待されています。

今回の共同研究は、MHC統御ザルが国家プロジェクトとして支援対象にあるiPS細胞研究・再生医療研究および、がん研究や感染症研究における臨床研究の 前段階での有効性検討および、安全性検討のためのモデルとして有用であることを実証するものです。また、現在自然発生個体に頼っている供給源を計画生産に より安定化することができれば、世界に遅れをとっているといわれている日本の臓器移植医療研究の進展をはじめとして、人類の健康・生命の維持という社会的 な研究価値創造に貢献できるものと考えられています。