東海医学会の設立40周年記念講演会で養老孟司氏が講演しました

医学部の教員や大学院生らで構成される学内学会の東海医学会では、2月6日に伊勢原キャンパスの松前記念講堂で「設立40周年記念講演会」を開催しました。同会は医学の進歩や啓発を図ることを目的として1975年に設立。最先端の医学関連情報を交換し合うため、学内外から講師を招いて講演会や研修会を実施しています。今回は、東京大学名誉教授で解剖学者の養老孟司氏が「医療社会の現状とそれに対する提案」をテーマに講演し、約80名の学生や教職員らが聴講しました。

養老氏は、「下医は病を医し、中医は人を医し、上医は国を医す」という言葉を引用し、「医学は最終的には医療システム全体の問題まで考えなければならない」と述べた上で、さまざまな視点から医療の現状について解説。高齢化社会の進行による医療費の増大が懸念される中、最先端の技術を導入した積極的な医療に対し、対処療法にとどめる待機医療の考え方が注目されていることなどを紹介しました。また、「病気や死は個人のものではなく、家族や身近な人に影響を与える社会的なものである」と語り、個人を中心に考えることの是非についてキリスト教文化や日本の近代史を振り返りながら説明。「人間はもともと『社会脳』を持つ社会的な動物です。あらためて人間の共同体のあり方を見直し、つくり直す必要があるのではないか」と指摘しました。最後に「物事はさまざまな角度からの解釈を試みるべきです。皆さん自身でよく考えてください」と結びました。

参加者からは、「今後の医療を考える上で重要な視点を教えていただきました」「医学の進歩は誰のためのものか、医療は何をどこまでするべきなのかを、もう一度考えてみたい」などの感想が聞かれました。

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