EPISODE1

常に地球をマイルドに保つ雲
宇宙から見えるその動きに魅了され

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ものごとが漠然として、捉えどころのない様を「雲をつかむ」という。しかしそんな「雲」を、あえて「つかもう」と挑む人がいる。東海大学情報デザイン工学部情報システム学科の研究室。雲の衛星画像に囲まれたデスクの向こうで、笑顔で迎え入れてくれたのがその人だ。人当たりが柔らかで、雲にたとえるのなら秋空に広がるヒツジ雲のような穏やかさ。中島孝准教授は明晰な語り口の中にユーモアを交え、周囲を明るく和ませてくれる。

「子どもの頃は、様々な自然現象に興味がありましたし、実験道具を改良することも好きでしたね。探究心から天体望遠鏡を親にねだって、夢中で夜空を見た記憶もあります。今、成果を示して、大学に研究費をお願いするのと同じかもしれない(笑)」。

学生時代は多様な現象を、根本から探る物理学に惹かれた。その中でも、仮説、実験、検証の積み重ねにより、地球上の様々な現象を解明する地球物理学が面白かったという。それが、現在の研究全ての礎になっているようだ。当初は地上から都市部の気候変動などを研究していたが、リモートセンシング技術を使って宇宙から地球を見る研究があることに探究心を刺激され、東京大学大学院へ。

「人工衛星を利用して地球観測をすると、街や植生などの地表の変化に興味を持つ人が多いのですが、私は変化の早い白い雲の動きが一番面白かった。世界的に研究者も少なく、解明されていないことも多いと知り、ならば自分が挑戦してやろうと思ったのです」。

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雲が果たす役割は大きい。地球が太陽の光で暖められると海水が蒸発する。蒸発した水分は大気の流れに乗って、例えば陸地の上に移動し、雲となって雨を降らせ真水を作る。これによって動植物は水の恩恵を受け、生命を維持していけるのだ。このほか、雲は地球における熱の出入りをコントロールする機能も併せ持つ。ある雲は太陽の光をさえぎって地球を冷やすのに、別の種類の雲は温室のガラスのように地表の熱が外に逃げるのを防ぐ。つまり、地球が暑くなり過ぎず、寒くなり過ぎない、そんな絶妙な環境を雲は保っているのだ。

「雲は意志を持つわけではないのに、物理的に非常に複雑な振る舞いをしながら、常に地球をバランス良くマイルドに保つ役割を果たしています。しかし、雲がどのように発生して成長していくのか、雲の内部はどうなっているのか、まだ理解できていないことがたくさんあります。私が大学院に進む頃は、ちょうど地球温暖化が問題となっていた時期で、地球観測衛星が発達するに伴い、観測ターゲットとして雲はとても有望だと感じたのです」。

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