EPISODE4

能動型レーダーを活用し、雲の成り立ちを解明
画期的研究と国内外から評価される

「JAXAで使っていたGLIセンサは、太陽光に照らされた雲を2次元で写真撮影するような、いわば受動型でした。これに対し、NASAの地球観測衛星クラウドサット搭載のレーダーは、自ら地表に向かって電波を照射し、その反射強度を計測することで雲の鉛直構造を探査できる能動型センサであることが特徴です。これにより、雲の鉛直方向の断面を見ることができるのです〔図:2参照〕。また、アメリカにおける研究の場ではこのクラウドサットをはじめ、カリプソ衛星やMODIS(中程度空間分解能センサ)を搭載したアクア衛星が同一衛星軌道上をわずか数分の時間差で縦列周回しており、雲に関する情報を逐一収集することができました。これらで観測したデータを組み合わせることで、雲のライフサイクルを統計分類する新たな解析手法を開発したのです。これは、現地で雲モデルの研究を行っている研究者との議論のなかで、急に浮かび上がってきた手法でした。試しにこの手法を用いて処理を行い、得られた結果を初めて目にしたときの驚きは、一生忘れることはないでしょう」。

初めての海外研究で悪戦苦闘したというが、レーダー研究の世界的研究拠点の場で得られた成果は多くの論文に結実。気候変動研究における不確実性の軽減に貢献できるものとして、国内外で高く評価される。また、米国気象学会誌などにも論文5編が発表され、国際学会における招待講演も行った。この成果が認められ、東海大学の若手研究者に贈られる2010年度松前重義賞(学術奨励賞)を受賞。今も論文の引用回数は着実に伸びており、いかに画期的な研究だったかがわかる。

「能動型レーダーを活用できたことで雲の奥行き情報が得られ、『みどりⅡ』の観測で抱いた3つの波長で値が異なる謎を検証し、雲の頂点と内部で雲粒の粒径が異なるという仮説の立証作業を一歩前進させることができました。同時に、幼年期、青年期、壮年期という各成長段階における雲の内部構造を解明することもできました〔図:3参照〕。雲粒の成長から雨に至るまでの過程を目で見える形で示したところに、私の研究の新規性があったといえます。この解析により、雲の頂上部分の雲粒の大きさがどれくらいの場合、雲のどの高さにどのような大きさの雲粒がどれくらい存在しているのか、雲の内部情報を明らかにすることができたのです」。

図:2 中国・四国地方上空の雲の断面図

図:2 中国・四国地方上空の雲の断面図

クラウドサット衛星が観測した日本海、中国・四国地方、太平洋にかけての雲の鉛直断面図(日本時間2006年7月8日13:25頃観測)。中国・四国地方の雲が2層構造を持っていることや、太平洋にかかる雲が高度16kmにもなる非常に厚い雲であったことが明確に確認できる。

コロラド州立大学CIRAが作成した画像に日本語を加筆。

図:3 各成長段階における雲の内部構造

図:3 各成長段階における雲の内部構造

雲成長過程の模式図。3枚の下図はNASAのテラ衛星とクラウドサット衛星の複合利用によって観測された幼年期、青年期、壮年期における雲の内部構造を示す。下図の横軸は雲粒の大きさの指標であるレーダー反射因子の強さ(右にいくほど大粒子)、縦軸は雲内部の深さ(上端が雲頂)。

2006年7月の1カ月分の全球観測から得られる観測頻度分布に着色(赤色ほど観測頻度が高い)。

EPISODE5