EPISODE5

100年後の地球を視野に入れ、温暖化の長期予測の精度向上に貢献

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しかし、現在の手法で解析できるのは、比較的地上に近いところで穏やかに発生する雲のみ。強力な大気の対流に伴ってできる積乱雲のような雲の成り立ちは、成長度合いが異なり、厚みもあるので観測が難しいという。また、雲とエアロゾルの相互作用を組み込んだモデリングを行う研究者に向けて、より正確なデータを提供するためのノウハウ開発もまだこれからだという。リモートセンシングを行う過程で新しい物理現象が発見されることもあり、そのような醍醐味を感じられる研究に探究心がやむことはない。

では、雲やエアロゾルの成り立ちや相互作用を深く研究することは、いったい将来どんなことに役立つのか。短期的には台風やゲリラ豪雨などの予測、自然災害に関するリスクマネジメントなどが予想されるが、実は視線はもっと先にあった。

「例えば地球の気温変動予想では、このままの状態で温室効果ガス(CO2)を排出し続けると、100年後には平均気温が5.4℃上がるという予測もあれば、2℃しか上がらないという予測もあります。上限と下限で3.4℃も差があると、対策の打ち方が大きく異なるのです。いわば人類が選択すべき道が全く異なる。雲とエアロゾルの解明がもっと進んで雲のモデリングができれば、気候モデルの予測精度が格段に上がります。未来を的確に予測できれば、そのために何をしなければならないかも明確になってくるのです。ある意味で政治や経済などの社会科学とも深く絡む部分でもあり、私の研究が国を超えた温暖化対策に少しでも貢献できればと思っています。これからは自然科学と社会科学の協働が強く求められるでしょう」。

今後は雲とエアロゾルの3次元観測に重点化したアースケア衛星や、 「みどりⅡ」の後継機衛星の打ち上げが予定され、さらに静止気象衛星「ひまわり」が2015年を境に第3世代に入れ替わるなど、多くの地球観測衛星およびセンサが同時稼動する時代が始まる。これら国内外の地球観測衛星計画に積極的に参加することで、新たな解明が進むことが期待されている。

「多種多様なデータが集まることで今まで見えなかったものが見えてくるはず。それらを複合的に用いて地球システムの謎の解明につなげていきたい。私が人生を全うする頃、研究成果が地球環境と産業社会のバランス良い着地点を見出すことに活かされていたら嬉しいですね」。

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