EPISODE3

次世代シーケンサーを操り
正確なタイピング技術を開発

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猪子教授はHLAの機能解析のみならず、早く正確にタイピング(型判定)するための技術開発にも精力的に取り組んできた。

「白血球のタイプはHLA型で分類されますが、7000種近くもあるので、血液型のように簡単にはいきません。例えば臓器移植の際には、HLAの型は移植する相手と適合するかどうかを判断する重要なマーカーとなります。それだけに正確で緻密、スピーディーなタイピング技術が必要なのです」。

猪子研究室にはDNAを増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)装置が十数台並び、きめ細かに遺伝子を研究できる体制が整っている。また別室には近年開発されたアメリカ製の次世代シーケンサーがあった。一見、巨大な白いプラスチックの箱のようだが、1台2千万から高額なものでは1億円を超えるという。

中身は半導体センサー技術を駆使し、高いコンピュータ性能によって塩基配列を細かく短時間で検出できる仕組み。全ての多型部位の位置情報を含めたHLA型が正確に把握できるという。

こうした次世代シーケンサーの性能を評価し、その内容をフィードバックすることでタイピング技術を進化させたのも教授の近年の大きな成果だ。

「これまで用いられていた蛍光ビーズ法では、みなし判定という感じで正確な型判定ができなかったのです。しかし、この次世代シーケンサーにも採用され、私自身が発明した『SS-SBT法』(Super high resolution Single molecule-Sequence Based Typing method)では、全ての多型部位を明らかにでき、曖昧さのない厳密なHLAタイピングを可能にしました」。

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成果をまとめた英語論文はこの9月に発表され、特許も出願した。1回の稼働で50 人分のHLA型を判定でき、HLA型と疾患との関連研究をしている他の研究者や、骨髄バンクなどで実用的に使用できるという。さらに世界で初めてiPS細胞(人工多能性幹細胞)を創ることに成功した京都大学の山中伸弥教授グループとも連携し、HLAバンク(HLAのタイプごとに数百種類の細胞を準備しておくバンク)やタイピング技術の向上といった点で協力しているという。

こうした最先端の研究ができる背景には、教授の研究の価値に理解を示し、研究環境の整備にも協力を惜しまない東海大学の姿勢がある。

「私が東海大学で研究生活を送るようになって以来、新しい学問である分子生物学の研究がやりやすい環境を常に整えていただき、その結果がこうした技術開発につながっています。また、HLA解析のための検体サンプルを提供してくれる他の研究室や、教育・研究支援センターの技術員がデータ解析に協力してくれるからこそ研究が成り立っているわけで、東海大学と関係機関の皆様には大変感謝しています」。

「恵まれた環境は幸運だった」と語る猪子教授だが、もちろん自身が地道に長年積み重ねてきた経験があるからこそ、研究は花開いているのだ。

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