EPISODE4

生命の不思議を感じる理系少年
分子生物学の可能性に魅了される

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猪子教授は少年時代から、生き物の不思議に興味を覚えていたという。得意科目は数学や理科という典型的な理系人間だったが、高校時代に学んだ生物は暗記の要素が強く、覚えるだけの勉強はつまらないと感じていた。

「分子生物学がちょうど勃興した時期に大学に進学。DNAが注目を集め、これは理論的だし、追究していくのはとても面白いと感じました。京都大学の自由な研究環境も、好奇心が強い自分には良かったですね。分子生物学を極めていけば、新しい知見が切り拓けるかもしれないと感じていました」。

遺伝子研究を志した最初のテーマは大腸菌。大腸菌もひとつの生命体であり、一晩で膨大に増殖するため格好の研究材料になったという。京都大学大学院を経て慶應義塾大学で7年間助手として勤めたが、同時期にヒトゲノム解明も可能な時代の到来を予感。「ヒトの多型」に興味がわき、「HLA」とも出会った。

当時この分野の第一人者で、移植学を専門としていた辻公美教授が東海大学に在籍していたことから、迷わず師事。1984年以来、東海大学を舞台に28年研究を行ってきた。

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東海大学で医学の博士号を取得し、助教授から教授へ。持ち前の面倒見の良さやリーダーシップが認められる形で、2000年には東海大学医学部副学部長に、2002年には東海大学大学院医学研究科委員長、さらに同年「ヒト複合形質の遺伝要因とその制御分子探索」プロジェクトが文部科学省の「21世紀COE(センター・オブ・エクセレンス=世界最高水準の研究教育拠点)プログラム」に選定され、COE拠点リーダーとして活躍する。2006年には医学部学部長に就任し、2010年まで5年間務め上げた。研究だけではなく、教育のリーダーとしても東海大学を牽引してきたのだ。

2013年3月に教授としての定年を迎えるというのに、旺盛な好奇心やチャレンジし続ける姿勢は変わることなく、慕ってくる研究者を温かく迎え、鼓舞し続けている。

今は東海大学伊勢原キャンパスにある研究室と産業総合研究所(東京・お台場)の2拠点に、約30名の研究員を抱える。共同研究や後進の指導に打ち込み、自身の研究を継承してくれる人材も育っているという。

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