EPISODE5

教育においても大学を牽引し続ける
新しい地平に立てる研究の醍醐味を

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取材に訪れた当日、畜産学の分野から猪子教授に師事し、数年にわたりトリの遺伝子を研究しているという若手研究者の話が聞けた。

「猪子先生はいつも柔和で、怒るような場面は一度も見たことはありません。私はトリのDNAを研究していますが、先生の多型性解析の技術や様々な知見、研究姿勢は勉強になることが多いです。ここでの研究により、将来は鳥インフルエンザの抑制などに貢献できればいいですね」。

良好な師弟関係や教授の温厚な人柄と共に、ゲノム研究はヒトだけでなく他の動物や植物とも関連し、大きな広がりがあることが伝わってくる。

研究における猪子教授のスタンスは、PCRやシーケンサーなどの操作は研究員に任せ、タイミングを見て課題や進捗状況を聞く。自身は新旧の資料がびっしり並んだ研究室でパソコンに向かい、英語論文を書くことが多い。同じ分野の海外研究者とは良きライバルとして切磋琢磨しつつ、情報交換も頻繁に行っているという。

「ただ、ヒトゲノムの研究における競争は熾烈で、誰がどんな論文を一番に書くか、しのぎを削っています。情報をオープンにし過ぎると他の研究者に出し抜かれたり、特許申請ができなくなったり、さらに若手研究者の芽を摘むことにもなりかねないので、その辺は神経を使っています」。

自分の研究だけではなく、自らを慕う研究員が将来も伸び続けることができるよう優しい配慮も欠かさない。

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「研究を活性化できるよう大学全体で研究環境を整えていくことが重要であり、定年を迎えたとしても何かしらの形で若手研究者の育成に力を入れていきたいですね。研究の先には、人類史上初めて見る景色や新しい真理が待ち受けているかもしれない。誰も知らない場所に、いち早くたどりつける達成感をぜひ味わって欲しいのです」。

自身が感じた研究の醍醐味を後進にも、という想いは強い。

一方、医学部の学生に対する教育に関しても『ゲノム解析技術』『HLAタイピング』『HLAと疾患の相関』といった選択科目を担当し、学生を親身に指導している。

「東海大学医学部生の多くは臨床医師をめざしており、こちらの指導や忠告を素直に聞き入れる真面目さはあります。ただ知的ハングリーさがもう少しあれば、と思うこともあります(笑)。研究面から臨床を支える道もあり、その重要性もまた認識してもらえると嬉しいですね」。

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