EPISODE4

教育の場も大切に、外部とも連携
臨床応用というゴールにつながるパスを

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阿部講師の研究室には4人の大学院生や技術員が在籍しているが、取材当日はたまたま東海大学医学部の2年生が解剖の仕方を教わりに来ていた。阿部講師からにじみ出る優しさが学生との対話を生み出し、研究室をオープンな雰囲気にしているのだろう。マウスの発生工学的実験を日々行っている遺伝子工学実験動物研究センターのスタッフとも気さくに打ち合わせを行う姿もあった。

ドイツでの6年に及ぶ留学経験から、医学先進国の国柄や文化も貪欲に吸収すると同時に、人間性を磨き、視野の広さも得たのだろう。

教育面では東海大学医学部の1年生に対して『生命の分子的基礎』と『医学英語』、2年生に『分子と細胞の医学』などの講義を担当している。

「学生に対してわかりやすい授業を行うことも大切ですが、一方でわからないことがあるから研究は面白い、ということを伝えたいと思っています。例えば討論などでは教科書に載っていることを単純に問うのではなく、今までの定説と全く違う論文を読ませ、自分はどちらが正しいと思うかを考えさせることもあります」。

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また学生からは、就職相談を持ちかけられることもあるという。

「私は企業への就職活動経験がないので、具体的なアドバイスはできません。ただ、生きていく上で頼りになるのは、やろうとしていることが好きだと思えるかどうか。自らの好奇心と経験から、好きなことに気付いて欲しい。研究室に来た学生とはとにかくいろいろ話し合い、そこから真に興味の湧く研究テーマを設定しています。いずれ企業へ就職するにしても、研究を通して好きな道に踏み出す応援ができたらと思います」。

学部生や大学院生の成長はことのほか嬉しく、励みになっている様子。また、授業のために調べたことが研究活動のヒントや新たな気づきになることも多く、研究だけでなく教育の場も大切に、その経験全てを自身の糧にしている。基礎研究はひとりで打ち込むイメージがあったが、阿部講師は世代や組織の垣根を越えて連携に労を惜しまない。ちなみに椎間板で発現する遺伝子群の機能解析は、東海大学医学部整形外科の教授らのグループや熊本大学のグループと共同研究し、臨床へのパイプ役になろうとしている。他にも大阪大学や京都大学、ドイツなど海外研究グループとの共同研究も継続しており、今後も骨格系疾患に関して幅広い医学分野での国際的活躍が期待される。

「これは臨床から基礎へと転向したある先生から聞いた話ですが、臨床の現場はサッカーにたとえるとある意味待ったなしのPK戦で、失敗は絶対に許されません。それに対して基礎研究ではいくら失敗しても最終的に1対0の勝利に貢献できればいい。つまり試行錯誤を繰り返してひとつのチャンスを見つけ、一点突破していくスタンスです。私の研究もすぐに治療への応用というわけにはいきませんが、東海大学という多彩な学部を持つ良きフィールドで様々な連携を図り、臨床応用というゴールへ、良いパスを送り出せる供給役になりたいですね」。

阿部 幸一郎 PROFILE