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厳しい師との出会いが研究者としての礎を築く

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熊本空港から自動車で約30分。阿蘇くじゅう国立公園内に、約75万平方メートルの面積を誇る東海大学阿蘇キャンパスがある。ゆるやかな傾斜の丘陵地帯には農場や牧場、農産加工場があり、様々な動植物が飼育・栽培され、学生たちの実習や研究に活かされている。阿蘇の山並みが見える梅雨の晴れ間、農学部応用植物科学科の植物環境科学研究室を訪ねた。

研究室の前にはミズゴケによる壁面緑化システムが設置され、環境との共生をめざす研究内容が察せられる。研究室に足を踏み入れると、若々しく、溌剌とした笑顔で迎えてくれる男性。星良和准教授その人だ。学生たちとジョークを言い合う姿もあったが、いったん研究内容について話し出すと眼鏡の奥の眼差しは鋭く、青年のような探究心が感じられる。
「私たちの研究グループでは、様々な植物を対象に、遺伝子レベルからの特性評価と環境保全に関して研究を進めています。特に力を入れているのが『ミズゴケの人工栽培・増殖研究』、食虫植物である『モウセンゴケの生産と活用のための研究』、『キュウリの遺伝子研究』です」。

幼少期は植物が好きというより、昆虫を採取しては観察したり、図鑑を見たりするのが好きな少年だったという。好奇心を伸ばしてくれた中学校・高校の恩師との良き出会いから、研究者になりたいとの思いを強くする。
「進化する動植物に興味を持ち、大学でいざ研究対象を動物か植物か選ぶ分岐点に立ったのですが、大型動物の解剖実習などはちょっと耐えられない自分がいました(笑)。また、研究で世界各地を飛び回る先生よりも、室内での研究がメインの先生の方がじっくり指導してくれるという先輩の助言もあり、比較的研究室での活動が多い植物系の研究を志すことにしたのです」。

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その後、広島大学大学院に植物細胞遺伝学の権威がいることを聞き、教授宛てに直接手紙を書き、入学を志願。当時はまだ珍しかった他大学からの大学院外部進学を果たす。さらに、そこで出会った食虫植物の研究で名高い厳格な教授に師事し、修士課程から博士課程の5年間、ほぼ休みなく研究に明け暮れた。外国人研究者も多い環境で苦手な英語も克服し、希少な食虫植物の研究に邁進した。

また、指導教授から外国での経験は将来につながるという助言を受け、大学院修了後はポーランドのワルシャワ農業大学で、植物遺伝に関する博士研究員として2年間を過ごした。キュウリのゲノム解読をテーマに、全染色体の識別法の確立で中心的役割を果たし、オーストリア国際シンポジウムで最優秀賞を受賞するなど成果を残す。

その後帰国し、広島大学で教務補佐員を約2年、福岡県大牟田市にある国立有明工業高等専門学校で講師や助教授として5年勤務。高専時代には生物部を作り、学生と共に研究も続けた。飽くなき研究への情熱が“縁”を引き寄せたのだろう、2005年に東海大学(当時九州東海大学)農学部応用植物科学科に迎えられ、現在准教授として活躍している。高専から東海大学へ、星准教授を慕って入学した学生もいたという。

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