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脳神経外科

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主な疾患の診断・治療および成績

脳腫瘍;

最新の画像診断装置を駆使し、病変の的確な診断と最善の治療法の選択を心掛けております。手術治療、化学療法、放射線治療のいずれに対しても、放射線診断科、放射線治療科、化学療法科との協力のもと選択する事が可能です。

最新の画像診断では、神経線維の走行と病変との関係を明らかとする、トラクトグラフィーと呼ばれる方法や、脳内の代謝産物を観察する方法(脳代謝画像)、脳全体の3次元画像など、重要な神経線維と病変の関係や病変の空間的な広がりの把握、病変の代謝産物のパターンから、発生している脳腫瘍の悪性度をある程度類推する事などが可能となってきました。手術治療を選択する際に、これらの三次元画像、トラクトグラフィー、脳代謝画像などを用いて総合的に精査し、より綿密な手術計画を立てることを心掛けております。

術前の手術計画を裏打ちする術中画像診断

当院では、手術中にMRIや脳血管撮影が可能なMagnetic Resonance X-ray Operation suite(MRXO)と呼ぶ、世界初の術中画像診断システムを保有しております。MRIは1.5T、また血管撮影装置はフラットパネル型で、両者とも最新の機器を保有しております。

中央の手術室では、あらゆる手術に対応可能な医療ガス、無影灯、電源、手術用空調システムが配置されており、またこの手術室には、血管撮影装置が併設されております。手術中必要なときに、患者さんを手術台の天板から移し変えることなく、血管撮影装置に移動させ血管造影することが可能です。手術室の左右にはCTとMRIが配置されており、各々の間には自動扉が設置されております。手術中MRI撮影が必要となった場合、この自動扉を開けると手術台とMRI装置が一直線に配置されているため、患者さんの頭部を開けたまま手術台の天板から移し変えることなくMRI装置内部へ移動することが可能で、1.5T MRIを使い通常のMRI撮像の他に、神経線維のイメージングなど高度な撮像を行うことも可能です。

【図】東海大学病院MRXO配置図

覚醒下手術と蛍光物質を用いた手術

画像診断の発達は、脳神経外科の手術に革新的な技術発展をもたらしました。しかし最新の画像診断を用いても、高度で精密なネットワークを形成する中枢神経に発生した腫瘍を摘出するとき数ミリ単位で腫瘍と健常部を区別することが求められます。また脳内に発生した腫瘍は時に手術顕微鏡を用いても、また術中の画像診断を用いてもこの局在が判断しかねることがあります。これらの問題を解決するために当院では、麻酔科の協力を得て患者さんを覚醒した状態で手術する覚醒下手術と、蛍光物質を用いた手術を行っております。

覚醒下手術はかなり前に脳神経外科領域の手術で行われておりましたが、手術中脳が腫れたり痙攣を起こしたりするなどの問題がありその後行われなくなった経緯があります。しかし神経機能を温存し、かつ脳腫瘍を最大限摘出するためには、やはり術中に神経の機能を確認しながら手術を行いたいとの脳神経外科医の要求と、麻酔科領域の技術革新と良い麻酔薬の登場が癒合して、最近リバイバルを迎えております。この手術は、言語中枢の近くに発生した腫瘍の手術などで威力を発揮し、手術中患者さんと会話しながらその神経機能を確認しつつ腫瘍を摘出することが可能となりました。

蛍光物質を用いた手術は、手術当日蛍光発光する物質を患者さんに飲んでいただき、手術中術野にレーザー光を当てると、代謝された蛍光物質が腫瘍のところで発光するので、確実に腫瘍を摘出することが可能となる手術法です。

以上の技術を当院では駆使し、良好な治療成績を得るように日々努力しております。

脳血管障害;
迅速な対応と確実な手術が高い社会復帰率を生む

当科では、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血、脳内出血、脳内出血発症の脳動静脈奇形などの患者さんに対し、24時間体制で手術及び術後管理を行っています。2005年の脳血管障害関連の開頭手術は141件、脳血管内手術は50件で全国の大学病院でも有数の手術件数を誇っています。手術に関しては、術前検査により的確に患者さんの全身状態のリスクを把握し、慎重に手術操作を行っています。他院にて、手術不能と判断された重症くも膜下出血の患者さんであっても、的確かつ迅速な診断のもと慎重な手術操作を行うとともに、当科独自の術後管理により約40%以上の患者さんが社会復帰されています。

近年多く発見され未破裂脳動脈瘤にもリスクを正確に評価し対応

また、近年画像診断の発達により、多くの未破裂脳動脈瘤の発見が増加しており、脳動脈瘤の部位及び大きさなどの解剖学的構造を充分把握した上で、開頭直達術にするかあるいは血管内手術にするかを検討し、患者さんに適した根治術を行っています。

治療の選択枝を増やした血管内手術

これまでの脳動脈瘤の治療は、開頭して行う開頭クリッピング術が最良の治療法として行われてきました。これにより、瘤の中に血流が入らなくなり、破裂した脳動脈瘤からの出血がなくなるわけです。この方法は、長年脳神経外科医が行ってきた手術方法で、すでに手術手技も確立されており、十分な効果も上げています。しかし脳動脈瘤の部位が到達困難な脳の深部であったり、大切な脳神経の近くにあって、開頭手術が困難な場合もあります。そこで、近年カテーテル(管)を動脈瘤に挿入して行う血管内手術による脳動脈瘤塞栓術が、もう1つの有力な方法として行われ始めました。インターネットの普及等により、情報量が豊富になり患者さんのなかにはこの方法を知っている人もいて、術前の説明(インフォームド・コンセント)の際、「開頭法だけをお話しても、患者さんに満足していただけない時代になってきています。

本療法(カテーテルを用いた血管内手術による脳動脈瘤塞栓術)は、大腿部(太もも)の大きな動脈から直径3mm前後のカテーテルを挿入し、血管の中を通していきます。カテーテルを脳動脈瘤になった部分まで導き瘤内にプラチナコイルを挿入して、開頭クリッピング術と同じように再出血を予防するものです。

この手術方法の利点は次に3つです。
1.全身麻酔でなくても手術ができる
開頭を行わないため、必ずしも全身麻酔を必要とせず、大腿部の局所麻酔で行うことができます。したがって、心臓、肺、肝臓に問題があり全身麻酔の受けられない患者さんや、肝臓が悪く出血傾向のある患者さんなど全身状態の良くない患者さんでも手術を受けられることが出来ます。
2.脳動脈瘤が開頭手術の難しい場所にあっても手術ができる
手術の到達困難な脳の深い部分にあっても、また大切な脳神経の近くにあり、手術操作で脳神経障害の出現する(知覚障害やマヒの出る)可能性のある部分でも、問題なく行う事ができます。
3.入院期間が短い
近年画像診断(頭部MRIなど)の進歩により、血管が破裂してくも膜下出血になる前に、脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)のあることを診断される患者さんが増加しています。

このような患者さんでは、皮膚を切開する必要がないため約3〜4日程度の入院で治療可能です(未破裂の患者さんでも開頭する手術では、1週間程度、動脈瘤が破裂し、くも膜下出血した場合は脳梗塞の危険があるため2週間程度の入院が必要)。

従来からの直接 手術(開頭術)に加え、この血管内手術を治療法の選択肢として加えることによって、脳血管障害の治療は、現在格段の進歩を遂げています。

脳血管造影の新たなる進歩、三次元アンギオグラフィの脳血管内手術への応用

近年脳神経外科領域では、脳動脈瘤をはじめ、脳梗塞、脳動静脈奇形、硬膜動静脈奇形、頚動脈海綿静脈洞瘻、脊髄動静脈奇形、静脈血管腫、Galenの大静脈瘤等の幅広い疾患に対し血管内手術が盛んに行われるようになり、頭蓋内血管の3次(3D)画像化に対する関心が高まっていました。

当大学が導入した脳血管造影(Integris 3D-RA)は、これを実現し、ますます複雑化しているニューロインターベンション手技において、複雑な血管構造や脳動脈瘤の形状などを立体的に情報をもたらします。

このため、迅速で確実な判断が可能となり、患者さんの安全をより容易に確保できるようになり、適切な治療計画を立てることも可能となりました。

1.複雑な血管構造、コイル、クリップ、ステント等も正確に描出
Integris 3D-RAは、1回のローテーションアンギオラフィ画像から、高解像度の3D画像を作成できます。サブトラクションしてないデータを使用するため、血管以外の組織やコイルの位置関係も把握できます。よって、開頭クリッピング術前後の評価ばかりか、血管内治療においては、コイルによる塞栓術前後の正確な評価が可能です。また、脳動静脈奇形などに対する塞栓物質をリアルタイムで描出して、正しい位置に留置されているかどうかを評価できます。
2.検査全体の線量を削減し、患者の負担を軽減
画像作成には、サブトラクションのためのマスク画像が不要です。このため、検査全体の線量や造影剤の量を削減することができ、患者の負担を大幅に軽減することが可能です。
3.高速画像処理で迅速な検査に対応
転送時間も含め、3D画像再構成時間は約2分で、再構成時間が短いため、検査を大きく中断させることなく、3D画像をもとに検査室で最適な治療計画を立てることが可能です。

3次元脳血管撮影(Integris 3D-RA)の脳血管内手術領域における臨床的有用性
1.くも膜下出血の原因である脳動脈瘤の血管内手術の場合
本療法は、大腿動脈経由で、まず親カテと呼ばれるカテーテルを動脈瘤近傍の親血管に導き、次にこのカテーテル内にマイクロカテーテルを挿入し、これを病変部つまり脳動脈瘤内まで導きます。さらに、このマイクロカテーテル経由で瘤内にプラチナコイルを挿入し、脳動脈瘤を塞栓させることにより開頭クリッピング術同様に再出血予防効果を得るものです。

この場合の問題点は、動脈瘤のネックと親血管及び血管分岐部との関係がこれまでの2次元的な脳血管撮影では、正確に判断できず、コイル塞栓術を行うにあたり最適なプロジェクションを決定することが困難でした。しかし、この3次元脳血管撮影(Interis 3D-RA)は、これらの臨床形態の把握を可能とし、より安全に血管内手術を行うことを可能としました。また、脳動脈瘤の形態をEndo Viewを利用し、血管内腔からも見ることもできます。さらに、脳動脈瘤の正確な体積も測定でき、動脈瘤のコイルによる塞栓率も算出することができます。
2.脳動静脈奇形(AVM)の血管内手術の場合
脳動脈瘤同様大腿動脈経由で行い、flow guide型のマイクロカテーテルを脳動静脈奇形の流入動脈及び血管塊(nidus)へ導き、ここから塞栓物質(Histoacryl)を注入し、脳動静脈奇形の塞栓を行います。これにおいても3次元脳血管撮影(Interis 3D-RA)は、脳動静脈奇形の流入動脈、血管塊及び流出静脈等の複雑な形態把握を可能とし、塞栓物質をリアルタイムで描出して、正しい位置に留置されているかどうかの評価を可能としました。よって、より安全且つ有効な塞栓術が行えるようになり、この塞栓術とradiosugery及び開頭手術を組み合わせることにより、従来は治療困難であったeloquent brainつまり脳幹、脳梁、基底核、内包等のAVMであっても治療可能となっています。

以上に述べたごとく、3次元脳血管造影(Integris 3D-RA)の導入により、複雑化している血管内手術手技において、複雑な血管構造を立体的に把握できるようになり、適切な治療計画のもと、より安全に血管内手術が行えるようになりました。また、インターネット等の普及により、患者さんが血管内手術を選択されることが多くなっておりますし、マイクロカテーテル、コイル及び塞栓物質等目覚ましい発展により今後ますます脳血管障害の治療の中で。この血管内手術の占める役割が増えることか確実です。

頭部外傷;
迅速対応により高い救命率を目指す

当院は併設されている救命救急センターと地域の救急隊との間で緊密な連絡を取りつつ、積極的に救急患者さんの受け入れを行っております。適応のある症例には速やかに手術を行い、ときには2例の症例に対して、同時平行手術も行っております。さらに、頭部外傷の症例では意識障害が前面にあるため、往々に頭部以外の外傷が見逃される危険があります。搬入される重症患者様のうち約30%は、多発外傷であります。多発外傷の診断は、救命センターにて迅速に行われ、関連各科と連携を保ちつつ各々の専門的治療を施しております。

今後とも救急隊、救命センター、関連各科との連携を保ちつつ、患者さんの社会復帰に向け努力いたします。

以上、当科では積極的に外傷患者様を受け入れ、集学的な治療を行っております。

不随意運動症;
困ったふるえに対して手術治療で緩和を目指す

自分の意志とは関係なく異常な運動が起こる不随意運動症に対しては、投薬治療を中心とした内科治療が行われています。しかしながら、満足な治療効果が得られずに永らく日常生活に不自由を感じている方もいらっしゃいます。外科的な技術を用いて内科的治療を補い、生活の質を向上させる事を目指します。

当院では、パーキンソン病の症状緩和や様々な原因による振戦に対して、定位脳手術の技術を用いた脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)を導入し、患者様毎に異なる症状の改善に努めております。脳深部刺激療法は、不随意運動症の改善効果に関して高い評価がなされ、いままで治療が困難であった症状の緩和(パーキンソン病に対して、著しいWearing on-off現象、著明なすくみ足や振戦の緩和など。薬物抵抗性の本態性振戦に。またジストニアに対する症状緩和など)に応用されています。術後に刺激条件を変更する事で薬物治療と併せて病状の変化に対応できる調節性を持ち、両側の症状への応用も可能になるなど、既存の手術治療と比べて優れた点を有する治療となっています。ただ、適応や治療目標の症状については、十分に考慮される事が必要であり、神経内科医を含めた総合的な判断の基で治療方針を決定する必要があります。当院では、特にパーキンソン病に対して脳深部刺激療法の応用を進めており、神経内科専門医とのチーム医療によって、適応の判断や手術前、後の薬物治療の調節、また入院中のリハビリテーション科との連携による積極的な訓練によって、高い治療効果が得られる努力を行っております。

小児脳神経外科;
小児脳神経外科で取り扱う疾患

当科では、水頭症などの先天奇形、小児脳腫瘍、小児脳血管障害、頭部外傷、感染性疾患に対する治療を行っております。

片側顔面痙攣、三叉神経痛
独自の画像診断と正確な手術により、片側顔面痙攣と三叉神経痛に対応

当院脳神経外科では、三又神経痛と片側顔面けいれんに対する神経血管減圧術を積極的に行っております。手術では、原因となった血管を圧迫されている神経から離して移動させますので、神経ブロックなどと比べ根治的治療と言えます。また当院では、術前診断にMRIを利用してより浸襲の少ない診断を外来レベルで行います。三又神経痛での症状の消失または軽快は全例で得られ、合併症(軽度の小脳症状)は5%に出現しました。一方顔面けいれんは92%の患者さんで症状が消失または軽快しました。合併症(一過性聴力障害)は、5%に出現しております。

患者様と情報を共有する各種講演会の開催
当科では、患者さんと医療に関する情報を共有するため、各種講演会を開催しております。
ひまわりの会(外来患者さんとそのご家族の方、および一般の方を対象とした患者友の会)
東海大学病院脳神経外科に通院されている患者さんの有志が、広く健康と病気について理解するために「ひまわりの会」を結成されました。
本会の目的は、
■会員相互の親睦を深め、日々の励みの歯とすること
■健康に関する様々な講演会を主催し、健康増進につとめる場とすること
■病院と強固なネットワークを構築すること
などであります。

具体的には年1回の総会と、健康に関する講演会を年2回開催しております。また最近は、ドクターヘリ見学会や病院内見学会なども随時開催しております。これまでの最近の講演内容を示します。

【画像】ドクターヘリ見学会
平成18年3月18日
家庭でおこるケガ、とっさの処置
─あたまのケガもふくめて─
東海大学講師 継淳
平成18年6月24日
血液がさらさら本当に大丈夫?
─健康番組の多くは娯楽番組─
東海大学助教授 後藤信也
平成19年2月17日
病院ボランティアをご存知ですか?
東海大学医学部付属病院ボランティアグループ オレンジクラブ
平成19年6月30日
メタボリックシンドロームとは何か?
東海大学准教授 谷亀光則