水素イオン濃度を極細電極で測定するセンサーを開発しました

工学部精密工学科の槌谷和義教授らの研究チームはこのほど、直径100μm(μ=マイクロ、1μmは100万分の1m)の特殊金属で作った電極を使い、口や鼻の中といった狭い空間の水素イオン濃度(pH=ピーエイチ)をピンポイントで測定するセンサーを開発しました。

槌谷教授らが開発したセンサーは、真空中でイオンをぶつけて金属を飛ばし、別の金属に降り積もらせて薄膜を作るスパッタリング法を応用。鉛蓄電池の電極などに使う金属ワイヤ(アンチモン)の先端をとがらせたうえで、その外側をヨウ素と銀の酸化物や銀の薄膜で覆うことで直径100μmの極細電極を完成させました。この電極の先端を溶液につけるとアンチモンと薄膜の間に電圧が生じ、それを電圧計で測るとpHがわかるという仕組みです。

これにより、pHによって進行が速まることがある虫歯を治療する際、その部分だけをピンポイントに測定して適切な対処をすることが可能になるほか、カテーテルや内視鏡の内部に取りつけて患部の状況を観察するのにも役立つなど、さまざまな活用法が考えられます。

酸性またはアルカリ性の度合いを示すpHは、これまでガラス電極と呼ばれる特殊な電極で測定していましたが、構造が複雑なためにその先端を1mmより小さくするのは難しく、取り扱いも大変でした。槌谷教授らの新技術では、電極の先端を削れば直径100μmよりもさらに細いセンサーを作ることも可能なため、今後は受精卵やがん細胞内部のpHも測定可能なセンサーの開発を視野に入れて研究を進めていく計画です。