マイクロ・ナノ研究開発センターの木村教授が「大学見本市2023~イノベーション・ジャパン」に出展しました

マイクロ・ナノ研究開発センターの木村啓志教授(工学部生物工学科)が、8月24日、25日に東京ビッグサイトで開催された「大学見本市2023~イノベーション・ジャパン」(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構)の「健康・医療」分野に研究成果を出展しました。この催しは、全国の大学や公的研究機関等から創出された研究成果の社会還元や技術移転の促進、実用化に向けた産学連携等のマッチング支援を目的とした国内最大級の産学連携イベントです。

木村教授の発表テーマは、「顕微鏡イメージング用組織・器官培養デバイス」です。このデバイスは、生体組織やオルガノイド(試験管内で作製した模倣臓器)を培養しながら、成長過程や薬剤等による反応行程を倒立顕微鏡で高精細に観察できるシステムです。生体組織をアガロースゲルなどの上で気液界面培養させながら観察する従来の方法では、盛り上がるように成長する生体組織の中央部に酸素や栄養が届かず、一部が壊死するという培養上の課題がありました。また、生体組織と対物レンズの間にあるゲルや培養液の白濁といった観察上の問題や、対物レンズの焦点距離といった顕微鏡特性の関係もあり、倒立顕微鏡による精密な観察が困難でした。今回紹介したデバイスは、酸素透過性の高い膜を底面に有する培養器と生体組織を保持するための多孔膜チップから構成され、生体組織の良好な培養を実現するとともに倒立顕微鏡による高倍率レンズを使った高精細観察を可能にしています。

木村教授は、新たなデバイスの仕組みや性能を実物や動画を用いて説明。さらに、この技術の応用例として、大阪大学や横浜市立大学の研究者と共同開発した、わずか数ミクロンの精子の形成過程を長期間、高精度に観察できる精巣組織培養イメージングデバイスについても紹介しました。ブースには企業の研究者らが数多く訪れ、デバイスの詳細や活用法について意見を交わしました。木村教授は、「このデバイスは従来の器官培養法に比べて極めて操作性が高く、さまざまな組織の培養に応用可能なため、生体内の現象や病態の解明、創薬といった医学・生命科学研究への応用が期待できます。広く活用してもらうため、ぜひ企業と連携して製品化、量産化につなげたい」と話していました。