「第15回学生相談室セミナー」で関野吉晴氏が講演しました

伊勢原キャンパスの学生相談室では12月2日に松前記念講堂で、「第15回学生相談室セミナー」を開催しました。本セミナーは学生の人間形成をサポートするため、さまざまな分野の第一線で活躍している専門家を講師に招き、2003年度から毎年実施しているものです。今回は、探検家・医師として活躍している武蔵野美術大学教授の関野吉晴氏が「辺境の保健医療」をテーマに講演。学生や教職員のほか医学部付属病院の関係者や近隣住民ら約80名が聴講しました。

はじめに、学生相談室のカウンセラーが本セミナーの趣旨を説明。続いて坂部貢医学部長が関野氏を紹介し、「辺境の地で暮らす人々と交流した貴重な体験について語っていただきます。ぜひ皆さんの勉学や将来に役立ててください」とあいさつしました。

関野氏は、一橋大学在学中にアマゾン川全域を下降して以後、頻繁に南米各地を旅し、密林の奥地で外部社会と接触せずに暮らす人々と交流。その過程で、「現地で住居や食事をともにさせてもらうかわりに医療を提供しよう」と考え、医師になったことを紹介しました。また、南米からアフリカまで、人類が移動したルートを自らの脚力と腕力だけをたよりに遡行した「グレートジャーニー」について、「アマゾンの人々の体格やしぐさ、性格が日本人と似ていることから、人類は、なぜ、どこから、どのようにして地球上に拡散していったのかを知りたいと思った」と、その動機を語りました。

さらに、人類の進化や移動の理由などについて説明し、ブラジルとベネズエラの国境付近に暮らすヤノマミ族などを例に、辺境の人々の社会や身体観、世界観、病気に対する考え方などについても紹介。「世界にはそれぞれ違った文化や考えを持つ民族が3千ほどあり、その中には、必要なときに必要なだけを採取する”足るを知る”文化や、強い絆で助け合い、分かち合う文化を持つ人々もいます。文明社会の中で”肥大した欲望”を持って生きている私たちは、そうした人々の考え方から何かを学ぶ必要があるのではないでしょうか」と語りました。

質疑応答では次々と質問があがり、関野氏は学生に向かって、「文明と接触していない地で医療を行う際は、現地の人々の文化を壊さないように気を付け、五感を使うことが大切です」とアドバイスしました。最後に、沓澤智子健康科学部長からのあいさつをもって閉会となりました。

学生たちは、「”現地の人々を調査や取材の対象とするのではなく、友だちになりたいと思った”という言葉が印象に残りました」「人類という大きな視点から人間をとらえると同時に、それぞれの民族が持つ文化を尊重しながら医療活動を行う関野先生の姿勢に感銘を受けました」「医療行為においては、他文化や他者への理解、個の尊重が大切なのだとあらためて認識しました」などと感想を話していました。

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