原子力損害賠償制度に関する講演会を開催しました

東海大学では11月12日に湘南キャンパスで、原子力損害賠償制度に関する講演会を開催しました。本講演 会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故での損害賠償が大きな課題となっていることを受けて、学生たちに原子力損害賠償に関する国際条約の概要や世界の 動向について知ってもらうために本学国際部が中心となって企画したものです。当日は、米国のシャーマンアンドスターリング法律事務所上席研究員で原子力損 害賠償法を専門とするヘレン・クック氏(オーストラリア出身)が「原子力損害賠償制度の国際的な仕組み」をテーマに講演。工学部や教養学部などの学生、大 学院生、教職員ら約80名が聴講しました。

講演に先立ち、国際教育センターの広瀬研吉教授が日本の原子力損害賠償制度の歴史や枠組み、福島第一原子力発電所の事故後に成立した「原子力損害賠 償支援機構法」「平成23年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」についてレクチャー。10月24日に政府が「原子力損害の補完的な保障に関 する条約(CSC)」の締結承認案と関連法案を閣議決定したことに触れ、「日本が原子力技術の国際展開を図るためにもCSCのような国際条約への加盟が重 要です。今日は世界の原子力損害賠償制度の仕組みをしっかり学んでください」と語りました。

続いてクック氏が登壇。原子力にかかわる国際法の概要を説明した後、原子力損害賠償制度の意義や特徴について解説しました。クック氏は制度の意義に ついて、「原子力事故が発生した場合にはきわめて甚大な被害が生じることから、被害者に対する損害賠償の支払いを確保することが重要で、それが原子力ビジ ネスの促進につながる」と説明。また、原子力損害に対しては事業者の過失の有無を問わず、事業者のみが損害賠償責任を負う原則があることを紹介し、「原子 力損害の被害者が誰に損害賠償を求めればよいか迷うことがないよう、事業者に責任を集中させている」と理由を説明しました。さらに、経済協力開発機構が主 導する「パリ条約」、国際原子力機関の「ウイーン条約」などさまざまな条約が存在し、実務上の混乱が生じている点を指摘。日本が加盟を目指す「CSC」は 世界共通の制度となることを目的としていることを強調し、「問題の解決のためには多くの国がCSCに加盟する必要がある」と語りました。

参加した学生は、「原子力損額賠償制度について体系的に学んだのは初めてです。日本のCSC加盟に関する動きに注目しながら、同制度についてさらに 学んでいきたい」「CSCへの加入は、日本の原子力技術の海外輸出を後押しすることがよくわかりました」と感想を語っていました。

原子力損害賠償制度に関する講演会を開催しました

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