公開シンポジウム「ミュージアムのトリセツ(取扱説明書)」を開催しました

東海大学課程資格教育センター博物館学研究室では10月17日に湘南キャンパスで、公開シンポジウム「ミュージアムのトリセツ(取扱説明書) よりよい生き方を探し求めて」を開催しました。年齢や障害の有無などにかかわらず誰もが楽しめる「ユニバーサル・ミュージアム」を目指し、利用者がより自由に博物館や美術館を活用する方法を考えるきっかけにしてもらおうと、本学が展開する「To-Collaboプログラム※」の大学推進プロジェクト「観光イノベーション(芸術・文化)」事業の一環として実施したものです。当日は、学芸員の資格取得を目指す学生や大学院生、教職員のほか、他大学の学生や近隣住民ら約180名が参加しました。

第1部では、鞆の津ミュージアム(広島県福山市)キュレーターの櫛野展正氏、埼玉県立近代美術館主任学芸員の渋谷拓氏、写真家の齋藤陽道氏が、それぞれの活動について語りました。櫛野氏は、「ヤンキー」「死刑囚」「障害者」が制作した、通常は美術とみなされにくい作品を展示することで新たな人々とのつながりが生まれたことを紹介。違いを超えて互いを認め合うことの大切さについて語りました。渋谷氏は障害のある作家たちの作品を集めた展覧会「すごいぞ、これは!」の概要を説明。作者が障害者であることをあえて前面に出さず、作品の質や面白さを理解してもらおうとする企画の意図について解説しました。また聴覚障害のある齋藤氏は、コメントを書いてスライドに投影しながら自分の作品や展覧会を紹介。自身を「聞こえない人ではなく見ることができる人」と表現し、「人との間にある境界線をどのように超えられるかを追求したい」と、写真を撮影する理由を語りました。

第2部では国立民族学博物館の広瀬浩二郎准教授をコメンテーターに迎え、本学博物館学研究室の篠原聰准教授をファシリテーターとして、3名によるパネルディスカッションを実施。広瀬准教授は、作品を通して障害者から多数派へとメッセージを発信することの重要性を訴え、そのためには障害者がキュレーターとして活躍するべきであると述べました。また、「学芸員は “伝える”という行為に責任を持ち、自分を主張することができない作者に代わって作品の意図や魅力をアピールしなければなりません。そのためには、知識だけでなく感性を養ってほしいと思います」と学芸員を目指す学生にエールを送りました。参加者は熱心に聴講し、終了後には活発な質疑応答が交わされました。

学生たちは、「ミュージアムを訪れる人々と作者をつなぐ学芸員の責任を再認識しました」「作品に込められた思いをどのように人々に伝えたらよいかを考える機会になりました。障害のある人々の作品も、まずはアートとして観てもらうことが大事だと感じました」などと感想を話していました。

※「To-Collabo(トコラボ)プログラム」
文部科学省の平成25年度「地(知)の拠点整備事業」に採択されたプロジェクト。全国にキャンパスを有する本学ならではの「全国連動型地域連携活動」を柱に、地域特有の問題や共通課題を各校舎の各部、学生、研究者が共有し協力して解決策を見いだす取り組みです。

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