公開シンポジウム第4弾「彫刻と生きる 人類とブロンズの歴史、そして…」を開催しました

課程資格教育センターでは12月2日に湘南キャンパス松前記念館講堂で、「ユニバーサル・ミュージアムが地域連携の扉をひらく 公開シンポジウム第4弾『彫刻と生きる 人類とブロンズの歴史、そして…』」を開催しました。本学が展開する「To-Collaboプログラム※」の大学推進プロジェクト「観光イノベーション計画文化・芸術事業」による活動の一環として実施したものです。本事業では、年齢や障害の有無などにかかわらず誰もが楽しめる「ユニバーサル・ミュージアム」をテーマに、利用者がより自由に博物館や美術館を活用する方法を考えるきっかけにしてもらおうと2014年からシンポジウムやワークショップを継続してきました。今回は、4年間の取り組みを振り返りながら「彫刻と生きる豊かな人生」について考える機会とすることを目的に企画。学芸員の資格取得を目指す学生や大学院生、教職員のほか、他大学の学生や近隣住民ら約150名が参加しました。

開会にあたって本センターの朝倉徹所長が、「多様性を大切にしたユニバーサル・ミュージアムは我々が日常で失ってしまった感覚を新鮮な驚きをもって呼び戻してくれるものです。専門家の方々の議論を通じてそうした考えが深まり、参加者の皆さんにとって実りある機会にしてもらいたい」とあいさつ。続いて本センターの篠原聰准教授がシンポジウムの趣旨を説明。「本事業では、『彫刻を触る☆体験ツアー』を毎年開き、学生や地域住民の方と一緒に、学内に設置されている屋外彫刻のメンテナンス活動に取り組んできました。『文化財保護法』改正の動きのなかで、個別の文化財保護から総合的な保存活用の支援への転換が提案されているように、彫刻を手でじかに触って汚れを落としたりワックスを塗布したりする作業を伴う彫刻メンテナンスは、保存と触る鑑賞の両方を体験できるプログラムであり、『ユニバーサル・ミュージアム』の理念に合致したものです。文化芸術を広く社会の中で生かしていくための新たな試みの一つとして、本学の彫刻メンテナンスが地域社会に貢献できることがあるのではないかと期待しています」と語りました。

基調講演では有限会社ブロンズスタジオ取締役の高橋裕二氏が「青銅、、そしてブロンズの魅力」と題して、人類と青銅のかかわりや青銅を用いた彫刻作品の魅力について語りました。高橋氏は、秦の始皇帝陵から出土した「青銅の長剣」や西漢時代の「銅馬」といった歴史的価値の高い遺物から、戦前の彫刻家・日名子実三の「女」やイギリスの彫刻家・ヘンリー・ムーアによる「Bronze Form」などを示し、それぞれの材料の素材と製法などを比較。「彫刻の鋳造はそもそも “何か形にしたい”ということがあって始まったのではないかと考えています。彫刻の究極は想念であり、彫刻という生き方もあるのではないかと思います」と語りました。続いて、小平市立平櫛田中彫刻美術館学芸員の篠崎未来氏と秦野市市民部生涯学習文化振興課課長の佐藤正男氏が、市民ボランティアによる彫刻保存や行政による彫刻を用いたまちづくりといった活動について報告しました。

第二部のディスカッションでは、高橋氏、篠崎氏、佐藤氏に加えて、コメンテーターとして本学教養学部芸術学科を卒業し、成城大学大学院文学研究科博士課程で美術史の研究に取り組む野城今日子氏、美術品コレクターで、平園クリニック院長・本学医学部非常勤講師を務める平園賢一氏、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏が登壇。篠原准教授の司会で、それぞれの活動や視覚と触覚を生かした美術品鑑賞のポイントを紹介するとともに、広瀬氏から上げられた「彫刻とはあなたにとってどういうものか?」との議論テーマに沿って登壇者がそれぞれの考えを披露しました。また、会場を交えた質疑応答では、「音楽やデジタルなど実体のない表現に対して、彫刻という実体のある芸術を選択する意義はどこにありますか?」「大きな作品と小さな作品、彫刻家はどのように選択して制作するのでしょうか」といった質問が寄せられ、熱心な意見交換が行われました。

※「To-Collabo(トコラボ)プログラム」
文部科学省の平成25年度「地(知)の拠点整備事業」に採択されたプロジェクト。全国にキャンパスを有する本学ならではの「全国連動型地域連携活動」を柱に、地域特有の問題や共通課題を各校舎の各部、学生、研究者が共有し協力して解決策を見いだす取り組みです。

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