「第21回SAGAシンポジウム」を開催しました

農学部では11月17日に熊本キャンパスで、18日に熊本市動植物園で、「第21回SAGAシンポジウム」(主催:SAGA21実行委員会)を開催しました。SAGAは「アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い(Support for African/Asian Great Apes)」の略称で、人間の進化の隣人であるチンパンジーを含む大型類人猿を中心に動物全般についての研究・飼育・自然保護の現状と将来について考えるための集いとして 1998 年に発足。毎年11月にシンポジウムを開いています。本学部応用動物科学科の伊藤秀一教授が運営に携わっており、2回目の熊本開催となった今回は本学総合研究機構の助成を受けて、「動物の社会を考える~ひとの常識は非常識~」をテーマに研究発表やパネルディスカッション、ポスターセッション、熊本市動植物園の見学などを実施。動物園関係者や研究者、学生、高校生ら約140名が参加しました。

初日は、初めにSAGA代表の友永雅巳氏(京都大学霊長類研究所/日本モンキーセンター)が開会のあいさつを、熊本県副知事の小野泰輔氏と荒木朋洋九州キャンパス長が開催地を代表して本会への期待を語りました。続いて伊藤教授が登壇し、「SAGAに向けての熊本での取り組み」と題して、「SAGAのホームページでは『チンパンジーの不適切な飼育展示に対する批判声明』が掲載されていますが、世間にはあまり浸透していないのが現状です。次の世代の若い人たちに科学的に動物のことを理解してもらい、どのような飼育がいいのかをともに考えていくことが大切だと考え、県内の高校生に参加してもらい、動物園の見学や本学の教員による科学的な解説も行ってきました」と紹介しました。

続いて、セッション①「大型類人猿の社会性と母子関係」では研究者3名が人工保育で育ったゴリラやチンパンジーについて研究成果や現状を映像や写真を交えて説明。午後のセッション②「動物の社会性を考えたアプローチ」でも3名が講演し、応用動物科学科の今井早希助教が「ほ乳類の子育て ~幼少期環境の影響~」について語りました。総合討論「ここが変だよ でも捨てたもんじゃない動物園~高校生の提案を軸に~」では、セッションの発表者や農学部の学生が議論。県内の高校生が参加した見学会やワークショップで「若い来園者が動物園に求めることは楽しさ」という意見が上がったことから、来園者と動物との関係、動物の管理法・利用方法について意見を交わしました。最後に、本学部の岡本智伸学部長が「阿蘇の草原から考える人の暮らしと生物多様性」をテーマに基調講演。別の会場ではポスターセッションも行い、応用動物科学科の今井助教、樫村敦講師、佐藤優菜さん(4年次生)、横山百合菜さん(同)も研究成果を出展しました。

2日目は会場を熊本市動植物園に移し、セッション①「大型類人猿の社会性と母子性」、セッション②「動物と自然災害」についてそれぞれ発表。閉会後には、資料館やバックヤード、チンパンジー舎の見学のほか、本学阿蘇実習フィールドも訪問しました。

「第21回SAGAシンポジウム」のプログラムは以下の通りです。
【1日目】熊本キャンパス
◇開会あいさつ SAGA代表 友永雅巳氏(京都大学霊長類研究所/日本モンキーセンター)
◇開催地あいさつ 熊本県副知事 小野泰輔氏
東海大学九州キャンパス長 荒木朋洋教授(農学部)
◇SAGAに向けての熊本での取り組み
伊藤秀一教授(農学部応用動物科学科)「高校生とともに考える『ここが変だよ動物園』」
◇セッション①「大型類人猿の社会性と母子関係」
中道正之氏(大阪大学)「人工保育のゴリラを群れに戻す ~なぜ人工保育をするのかを考える~」
林美里氏(京都大学霊長類研究所)「飼育下と野生のチンパンジーにみる母子関係~社会性の発達を支える双方向の愛着形成~」
平田聡氏(京都大学野生動物研究センター熊本サンクリュアリ)「飼育下のチンパンジーの幸せを考える~熊本サンクチュアリの設立と日米比較~」
◇セッション②「動物の社会性を考えたアプローチ」
今井早希助教(農学部応用動物科学科)「ほ乳類の子育て ~幼少期環境の影響~」
長野太輔氏(熊本市動植物園)「チンパンジーの社会性を考慮した治療アプローチ~群れに戻すことのメリットとデメリット~」
福守朗氏(鹿児島市平川動物公園)「動物の社会性を守るために ~動物園での取り組みと課題~」
◇ディスカッション
総合討論「ここが変だよ でも捨てたもんじゃない動物園~高校生の提案を軸に~」
コーディネーター:伊藤秀一教授
◇基調講演
岡本智伸教授(農学部長)「阿蘇の草原から考える人の暮らしと生物多様性」
◇ポスターセッション

【2日目】熊本市動植物園
◇熊本市動植物園園長あいさつ 岡崎伸一園長
◇セッション①「大型類人猿の社会性と母子関係」
松本卓也氏(総合地球環境学研究所)「野生チンパンジーの障害児~集団内で観察されたケアの様子と、その報道内容から見る人間の常識~」
◇セッション②「動物と自然災害」
末吉益雄氏(宮崎大学 産業動物防疫リサーチセンター)「口蹄疫、アフリカ豚コレラ、豚コレラおよび高病原性鳥インフルエンザについて」
松本充史氏(熊本市動植物園)「熊本地震からの復旧」
◇総括・閉会のあいさつ

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