農食サイエンスカフェ「動物の親子関係を支える行動の仕組み」を開催しました

熊本キャンパスでは、11月2日に熊本市・びぷれす熊日会館7階の「東海ステーション」で「東海大学&尚絅大学 農食サイエンスカフェ」を開催しました。今年7月に締結した尚絅大学・尚絅大学短期大学部と教育・研究活動の進展に資することを目的とした包括協定に基づき、10月から両大学の教員が講師を務め、全9回実施しています。3回目となる今回は、本学農学部応用動物科学科の今井早希助教が「動物の親子関係を支える行動の仕組み」と題して講演。地域住民ら34名が来場しました。

今井助教は、幼少期に虐待を受けた経験がある子どもが成人後も他人との距離感がうまくつかめなくなるといった症状の出る「愛着障害」について解説。「子育てには食べ物を与えることと同じくらい、抱きしめたり、声をかけたりといったケアが大切です」と語り、アカゲザルの実験では、母親と隔離された子ザルの何匹かは死に至ったという例や、針金で作った母親と柔らかい布で作った母親と一緒にすると後者に近寄るといった研究事例を紹介し、「親子関係は双方向の活動によって成り立ちます」と解説しました。

また、マウスを用いた親子関係の研究成果について、「親は出産前に巣を作り、子どもが生まれてからはグルーミングをしたり、温めたりし、子どもは親から離れると超音波で呼ぶといった愛着行動をとります。これは、Usp46という人間も持つ遺伝子が影響していることがわかっています。Usp46遺伝子が突然変異したマウスは、子どもを食殺したり、傷つけたりする個体も現れました」と紹介。「遺伝子突然変異マウスの子どもを突然変異を持たない別のマウスのもとで育てた場合、成長後の虐待行動は見られませんでした。『遺伝子×行動が養育行動を決める』のです」とまとめました。

講演後には、「マウスの実験による幼少環境が子に及ぼす影響についての説明で、24時間母親と一緒にいるよりも、1日15分程度離したほうがストレス耐性を上げるとありましたが、人間にも同じことが言えるのでしょうか?」といった質問が寄せられました。講演終了後も熱心な来場者が個別に質問していました。

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