フィンランド映画『東方の記憶』上映会を開催しました

文化社会学部北欧学科では10月25日、湘南キャンパス2号館で文化社会学部・知のコスモス「フィンランド映画『東方の記憶』上映会」を開催しました。日本とフィンランドの外交関係樹立100周年の記念行事の一つである同作品のフィルムツアー・ジャパン(国内8カ所で上映)の一環として、日本で唯一、北欧学科を設置する本学においても上映されました。

会場には学生や教職員のほか、地域の方々も多数詰め掛けました。上映に先立ち、日本とフィンランドの交流促進に尽力するフィンランドセンターのアンナ=マリア・ウィルヤネン所長が、上映作品とその主役であるフィンランドの言語学者、グスタフ・ヨーン・ラムステッド(1873~1950)について紹介しました。ラムステッドは共産圏になる前のモンゴルを訪れ、詩やことわざ、物語や歌などを収集・研究しました。彼の探求心はモンゴル語や日本語、韓国語にも及び、その語学力が高く評価された結果、1919年から10年間にわたって初代駐日フィンランド公使を務めた経歴を持ちます。

『東方の記憶』はラムステッドの回顧録を基にしたモノローグを主軸に据え、現在のモンゴル、日本、さらには中国や韓国をとらえた映像と、市井の人々に対するインタビューなどを交えて構成されています。モンゴルでは中国(清朝)からの独立、日本では原敬首相の暗殺や関東大震災からの復興、中国では蒋介石のクーデターなど、東アジアの激動の時代を間近で目撃したラムステッドの半生が、今日の各国の姿を背景に綴られています。

上映後はニクラス・クルストルム、マルティ・カルティネン両監督が登壇し、客席とのトークセッションを行いました。学生から「作品の中でラムステッドが生きた当時の写真ではなく、現代の映像を用いたのはなぜか?」との疑問が投げ掛けられ、ニクラス監督は「ラムステッドに関しては、当時の映像を使ったドキュメンタリー作品が本作以前に作られており、同じ手法を使っても意味がないと思った。アニメーションや俳優による再現も考えたが、実験的な試みをすることで化学反応を期待した」と応じました。また、「特にこだわった点は?」との質問にマルティ監督は、「一つに絞るのは難しいが、東京で撮影した占い師のシーンは気に入っている。映像や音だけでなく、精神性もよく表現できたと自負している」と回答しました。さらに「作品を通じて、ラムステッドが言語能力に長け、フィンランドと東アジア諸国を結び付けた重要人物であることが分かった。フィンランドではどのように位置づけられているのか?」という問い掛けに、両監督は「母国でも超有名人というほどではないが、私の世代では学校でも習った人物です。この作品をきっかけに、両国の若い世代がラムステッドや互いの国に興味を持ってくれればうれしい」と応じました。

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