デンマーク・ヨーロッパ学術センターとつないで同国のQOLを学ぶオンライン特別講演会を開催しました

文化社会学部北欧学科※では5月22日に、デンマーク・コペンハーゲン近郊にある本学ヨーロッパ学術センターのヤコブ・スキュット・イエンセン副所長によるオンライン特別講演会「デンマーク社会におけるQOL」を開催しました。国連の持続可能開発ソリューションネットワークが実施している「世界幸福度ランキング」で、同国が上位に入っている要因やQOL(Quality of Life)が高いといわれる背景を直接学ぶ機会として企画したものです。当日は、1年次生対象の「北欧文化論」(担当=柴山由理子講師)と「北欧の福祉政策」(同=浅井亜希講師)の受講生ら約110名が受講しました。
最初に同センター臨時職員のバータル・ハンセンさんが施設内をバーチャルツアーとして案内。北欧デザインのインテリアでまとめられた館内をスマートフォンのカメラで映して回り、日本文化の発信や学術・学生交流の拠点として利用されている同センターの活動を紹介しました。
イエンセン副所長の講演では、デンマークにも生活習慣病やアルコール中毒、うつ病の増加といった社会問題があることを説明。社会制度や国民の意識について考察し、デンマークでは季節を問わず外に出ることを好む傾向があり、平均年齢を世界平均と比較した場合に必ずしも同国は高くないことを紹介しました。さらに、「社会全体として異なるライフスタイルを持つ人に対する寛容性が高く、『自由と平等』を基本理念に無料の医療や教育・失業保険・年金制度といったセーフティー・ネット(社会保障制度)を構築している」と解説しました。「デンマークは人口も少なく小国なので、”国民を捨てる余裕がない”。そのため、国民同士が助け合い、税金も”国民への投資”であると考えています。また、そのような国だからこそ、仰々しくなく快適な人間関係や雰囲気づくりを大事にする気風があるのかもしれません。デンマーク人にとって幸福度とは、それぞれの生活への満足度のことを指すといえるのではないでしょうか」とまとめました。
続いて、学生たちから高校生卒業後、大学に進学する前に1年から2年ほど海外で生活するデンマーク人の「サバティカル」の考え方や、同国で暮らしてよかったと感じていることなどについて質問が寄せられました。学生たちは、「オンライン会議システムで講演を聞くのは今回が初めてでしたが、現地の雰囲気が伝わり、内容もより実感を持って理解できたように思います。また、顔を合わせながらお話を聞くような感覚もあり、とても有意義で楽しい時間を過ごせました。講演の中では、国民気質の柔軟性と社会保障の安心感が高い満足度につながっているとの指摘が印象的でした。日本もこれから大きく変わっていく中で、よりよい社会にしていくためには、広い視野で考え、さまざまなツールを活用することが大切なのだと感じました」「ヤコブさんの話の中で、”幸福度”ではなく”満足度”ととらえたほうがいいという点や、QOLは時間の使い方と密接にかかわっているという指摘がとても勉強になりました。その一方で、デンマークの制度や考え方は、デンマークならではの歴史や文化的な背景によって成り立っており、日本で取り入れるには日本なりの形を模索する必要があることもよくわかりました」と感想を話していました。
※東海大学文学部は、2018年4月から文学部と文化社会学部の2学部に改編され、北欧学科は文化社会学部を構成する学科となりました。