土木工学科の笠井教授が中心となって取り組んでいる研究成果が平成29年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞しました

工学部土木工学科の笠井哲郎教授が中心となって、鹿島建設株式会社と三和石産株式会社、学校法人東海大学が取り組んでいる「廃棄生コン起源の再生セメントによる超低炭素コンクリートおよび鉄筋コンクリート部材の実現」が、平成29年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰の技術開発・製品化部門を受賞しました。この賞は、地球温暖化防止に顕著な功績があった個人や団体をたたえる目的で毎年行われているもので、笠井教授らは一般的なセメントに比べて製造時の二酸化炭素負荷が極めて少ないセメント製造技術を確立し、その製品化を進めたことから同部門での受賞を果たしました。12月4日に東京・霞が関のイイノホールで開催された授賞式には、笠井教授のほか、大学運営本部の利根川昭副本部長、研究推進部の山口滋部長、土木工学科主任の梶田佳孝教授らが出席。学園を代表して利根川副本部長に環境省の渡嘉敷奈緒美副大臣から賞状が渡されました。

コンクリートは通常、材料のセメントや水、砂・砂利(骨材)などを工場で混ぜ、アジテーター車で現場に輸送して用いられますが、現場では工事の進捗に支障がないよう少し多めに発注します。このためほとんどのコンクリート施工現場では残余の生コン(戻りコンクリート)が発生し、廃棄物として処理されてきました。今回受賞した技術では、戻りコンクリートを処理する際に発生する固形物(スラッジ)を脱水処理した原料を使って再生セメント(SRセメント)「Cem R3」を製造することに世界に先駆けて成功。この材料に産業副産物混和材を混合して使用することで、通常使用されているポルトランドセメントと同様の性能を発揮し、鉄筋コンクリート部材などにも利用できる強度を持つ「エコクリートR3」を製造する技術を確立しました。通常セメントを生成する際には1トン当たり約0.7トンの二酸化炭素が生じていますが、この技術を用いればその発生を9割ほど削減することができ、最大で全国総排出量の0.07%にあたる85万トン/年の二酸化炭素を削減でき、廃棄生コンクリートに起因する解体コンクリート塊100万トンに相当する最終処分量の抑制が期待できます。このコンクリートはすでに神奈川県藤沢市内の工事現場で導入されるなど、実用化の動きも進んでいます。

笠井教授は、「私自身がこの研究を続けてきた成果だけではなく、東海大学が長年にわたって環境分野に貢献する研究に取り組んできたことに対する表彰だと考えています。現在では、神奈川県内のコンクリート製造業者とも新しい連携が始まるなど、コンクリート廃棄物の地産地消の実現に向けた取り組みも進んでいます。さまざまな分野で低炭素社会の実現に向けた研究は進んでいますが、まだまだ商業ベースで実用化されたものは少ないのが現状です。関東地方は都市部が多いこともあり廃棄物処理施設が設置しづらい反面、戻りコンクリートも膨大に発生しています。まずは湘南地区でコンクリートの完全リサイクルを実現し、この技術を神奈川県、関東地方全体にと広げていきたい」と話しています。

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