大学院工学研究科の阿部さんがKISTEC Innovation HUB 2019 in Ebinaで受賞しました

大学院工学研究科電気電子工学専攻2年次生の阿部裕太さん(指導教員=光・画像工学科 前田秀一教授)が11月22日に、「KISTEC Innovation Hub 2019 in Ebina」のポスター賞を受賞しました。同交流会は、研究、技術開発の成果発表や支援事例の紹介を通して、産学公の交流と連携を促すことを目的に毎年行われているもので、昨年は10月に開催されました。ポスター賞は、交流会参加者の中から若手研究者による優れた発表に贈られており、阿部さんのほか5名が受賞しました。

阿部さんの研究テーマは、「金属ニオブ上に形成した酸化ニオブ薄膜による干渉色の混色」です。ニオブは酸化すると色が変わる性質を持っているレアメタルで、薄膜状にして金属の表面に塗布(加飾)すると、薄膜が光を選択的に反射してさまざまな色に輝く干渉色を生み出す性質を持っています。一般に用いられているインクに比べて紫外線を照射したり、高温下に置いたりしても変色しにくい性質を持っているため、新しい加飾技術として期待されています。その一方でこれまでの加工法では、1枚の金属上では単色しか表現できないという限界がありました。研究では、ニオブを使って複数の色を表現する方法を提案。金属板の一部をマスキングしたものに光を当てて模様を印刷するフォトリソグラフィーの手法を応用し、美しい光沢を保ちつつ1枚の金属板上でさまざまな色を表現することに成功しました。これによって、アクセサリーなどの表面を加飾する新しい手法としての可能性が広がると期待されています。

「交流会に参加するにあたって、研究内容をできる限りわかりやすく伝えたいと思い、何度も後輩たちからアドバイスをもらって修正を重ねてポスターを作ったので、授賞は本当にうれしく思います。研究を始めたきっかけは、3年時に研究室を選ぶ際に、先輩から見せてもらったニオブの薄膜干渉色を『きれいだな』と思ったことがきっかけでした。加工技術に関する研究なので、実験の結果が数値ではなく、目に見えますし、うまく手法が確立できれば社会の役にも立ちやすいのがこのテーマの魅力だと感じています。実際今回も、企業の方などにも興味を持ってもらうことができ、ニーズのある研究なのだとあらためて実感できました。また、前田先生の研究室で長年取り組んできたものであり、私自身もすでに卒業した先輩たちが残してくれた論文を何度も読み直しながら研究を続けてきました。私も後輩たちに自分の成果を伝え、伝統的な研究に厚みを加えられるようしっかり論文にまとめたい」と話しています。

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