大学院の卒業生と学生が日本機械学会の若手研究者対象の学会賞を受賞しました

大学院総合理工学研究科博士課程2年次生の川本裕樹さん(指導教員=工学部動力機械工学科・高橋俊准教授)と工学研究科機械工学専攻を3月に修了した倉辻風樹さん(指導教員=畔津昭彦教授・株式会社いすゞ中央研究所)が9月9日に、日本機械学会のベストプレゼンテーション賞と若手優秀講演フェロー賞をそれぞれ受賞しました。ベストプレゼンテーション賞は、昨年度機械学会の「エンジンシステム部門」が開いた研究会などで優れた講演発表を行った35歳以下の会員に贈られるもので、「若手優秀講演フェロー賞」は同じく26歳以下の会員に贈られます。

ベストプレゼンテーション賞の川本さんと若手優秀講演フェロー賞の倉辻さんはともに、本学が参画して昨年度まで行われていた内閣府総合科学技術・イノベーション会議戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「革新的燃焼技術 機械損失低減グループ」に参加。エンジン内部でピストンが駆動している最中に、内部の油がどのように動いているのかを可視化する研究に取り組んできました。

川本さんは、潤滑油がピストンリングとピストンが接している部分をどのように流れているのかを、2相流解析という手法を使って計算するシミュレーションモデルを作成。エンジンの燃焼室内部に潤滑油が流れ込んでしまう問題が発生するメカニズムを明らかにしました。一方の倉辻さんは、エンジン内部の挙動を可視化する「フォトクロミズム」の手法を使い、ピストン内部における潤滑油が動く速度を計測。正常に駆動している最中はピストンとの相対速度で吸気時に10cm/sec、それ以外は数cm/secと比較的ゆっくり動いている一方、異常に油が消費されている時には速度が速くなっていることを明らかにしました。これまではピストン駆動時には油が高速で動くと考えられており、今回の成果はその常識をくつがえす画期的な発見となりました。

川本さんは、「これまでSIPに参加し、5年間かけて取り組んできた成果に興味を持ってもらえたことをうれしく思います。2相流解析は、空気と油など性質の異なる2種類の物質の挙動を調べる手法ですが、それをエンジンのシミュレーションに応用した点に新規性があります。この研究は、目で見ることのできない世界を可視化し、特定の現象が発生するメカニズムを検討できる点に魅力を感じています。自動車メーカーの技術者や他大学の先生方に実験結果を報告し、意見をもらいながら研究を進められたのは、SIPに参加できたからこそのことで、こうした環境を用意してくれた先生方に感謝しています」と話しています。

畔津教授は、「SIPは若手研究者の育成も大きな目標に掲げています。今回プロジェクトに参加した学生が学会賞を受賞したことは、教育面での成果が評価されたもの。指導する立場の私たちにとっても大きな喜びです。SIPによる活動は今年4月で終わりましたが、現在は国内自動車メーカーが結成しているエンジン研究の支援団体『自動車技術研究組合』の委託研究として着々と成果を上げており、フォトクロミズムの手法を使いたいとの要望も多くの研究者から寄せられています。私たちが開発した手法を使い、より多くの研究成果が発信される段階に入ったと考えています。さらに、東海大生たちが今後もこの研究に参画してくれることを期待しています」と話しています。

機械学会受賞 (1)_525.jpg

機械学会受賞 (2)_525.jpg