大学院生が執筆した熱電素子に関する研究論文が国際ジャーナルに掲載されました

大学院工学研究科応用理化学専攻2年次生の関侑平さんと工学部材料科学科の高尻雅之教授が執筆した論文が、国際ジャーナル「Organic Electronics」(インパクトファクター3.50)に9月30日付で掲載されました。同誌は、有機ELや有機トランジスタなど、有機物を使った半導体を扱っています。

関さんは、自然界で発生する小さな温度差を電気に変換できる熱電素子を有機物で作る手法を研究しています。熱電素子は、温度差さえあれば微弱な電気を起こせるため、災害で送電網が寸断された場所の様子を調べるセンサなどの電源として期待されています。これまでの研究では、アセトニトリルに電気を通す性質を持つPEDOTという有機材料を混ぜた溶液に電圧をかけて薄膜を作る電解重合法で、温度条件を変えた時の薄膜の性能変化や、アセトニトリルに水やメタノールを混ぜた場合の膜厚の変化などを分析。その成果をまとめた論文が、2018年1月28日付の「Organic Electronics」と2019年9月付の「RSC Advances」(インパクトファクター3.05)に掲載されています。

今回掲載された論文では、さらなる性能向上を目指して、PEDOTとカーボンナノチューブを混合した素子の製造に挑戦。カーボンナノチューブの分散液をガラス上に塗布し、その上から電解重合法で薄膜を作ると、これまでの素子よりも格段に高い強度を持ち、電気を通す性能の指標である電気伝導率が10倍ほどに高まることを明らかにしました。「高尻教授の研究室では、実験の手法や進め方を学生自身が考え、やりたいことをとことん突き詰められる環境があります。その分、特定の実験の必要性や論文執筆に必要なデータの内容なども自分で考える必要がありますが、どんなことでも自分でやりたい私のような学生には最高の環境だと思います。有機系熱電素子はこれまで、プラスの電気を発生させるP型の開発が進んでいる一方、マイナスの電気を発生させるN型の開発が進んでおらず、実用化に向けた大きな壁になっています。今後は、N型の熱電素子の開発やP型の素子だけで発電できる機構などの開発を進めたい」と話しています。

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