卒業生が日本建築学会の優秀卒業論文賞を受賞しました

工学部建築学科を2019年3月に卒業した山田弦太朗さん(大学院工学研究科建築土木専攻1年次生・指導教員=伊藤喜彦准教授)と近藤美鈴さん(指導教員=小沢朝江教授)がこのほど、「2019年日本建築学会優秀卒業論文賞」を受賞しました。全国の大学から応募のあった卒業論文から15作品が選ばれるもので、建築分野では最難関の賞です。

山田さんの受賞テーマは、「マムルーク朝期カイロのムカルナスに対する計算幾何学的検討-3次元パラメトリックモデルに基づいたセミドーム形態の変遷についての分析-」です。この研究は、イスラーム建築に見られるハチの巣状の天井装飾「ムカルナス」のアウトラインを二次元で記した平面投射図をもとに、三次元的に装飾のCGを映しだすプログラムを構築するもの。山田さんは「建築学科に在籍しましたが、歴史学など文系科目にも興味があったので、この研究を始めました」ときっかけを語ります。昨年6月には3週間にわたってエジプトのカイロを訪問。モスクを回りながら、数多くのムカルナスを撮影し、研究材料を収集しました。「カイロのムカルナスのコンピュータを利用した研究については日本国内での研究実績が少ないので、資料がそもそも少ない。自分の目で建築物を見て、荘厳さや美しさに魅了され、研究への意欲が高まりました」と振り返ります。今回の受賞を聞き、「喜びよりも驚きが大きく、賞状を手にしてようやく実感が湧いてきました。カイロから帰ってきてからは、『もっと行きたいモスクがあったな……』と少し後悔していたので、近いうちにまた現地で研究材料を集め、さらに精度の高いプログラムの構築につなげたい」と目を輝かせていました。

一方近藤さんは、「部屋用途と着座からみた畳敷きの使い分けと成立背景」のテーマで受賞しました。この研究では絵巻物や建物の図面といった資料をふんだんに活用し、古代から江戸時代までの畳の使い方の変化を分析。畳は、古代においては建物の内部の使い方が流動的だったため、会合などで人が座る場所にのみ置いて座具として用いられましたが、時代が下り部屋が用途ごとに固定化されるにつれて室内に敷き詰められるようになりました。この変化に伴い、「吉の敷き方、凶の敷き方」という概念が生まれ、江戸時代には徳川将軍家の血縁者が利用する公的な部屋にのみ「吉の敷き方」が用いられ、将軍家の権威を表象するようになったことなどを明らかにしました。この研究を始めたのは、「現代にみられる部屋に敷き詰める畳の使い方に『なぜ畳は敷き詰められているのだろう』と疑問に思ったことがきっかけだった」と語る近藤さん。「何度も仮説を立てては検討していったのですが、最初は上手くいかず苦労もしました。でも、1年間研究を続ける中で、あきらめなければ必ずゴールが見えてくることを身にしみて感じました。オフィスの内装やインテリアを手掛ける会社に就職してからまだ半年ですが、一つのことをやり切った経験が大きな自信になっています。将来は研究成果や研究を通して培った知識も生かしながら、日本らしさを表現した和風の内装も手掛けたい」と話しています。

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