「終戦70年記念講演会―戦争と平和を通じて自由を考える―」を開催しました

教養学部人間環境学科社会環境課程では、5月26日に社会環境セミナー「終戦70年記念講演会―戦争と平和を通じて自由を考える―」を湘南キャンパスで開催しました。戦争体験に関する講話を通じて、学生たちに日本とアジアの共生や教育のあり方、自由と命の大切さを見つめ直してもらうことを目的に、毎年開催しているものです。終戦から70年目となる今年は、陸軍戦闘機のパイロットだった馬場安(しずか)氏を講師にお招きし、学生や教職員ら約70名が聴講しました。

91才の馬場氏は逓信省航空機乗員養成所14期操縦生として操縦学や航空力学などを学んだ後、飛行訓練を重ねて大刀洗陸軍飛行学校を卒業。その後、フィリピンや沖縄の航空戦に参加し、特高隊員に志願した22歳の時に中国で終戦を迎えた日々を振り返りました。「養成所では連帯責任を取らされ、体罰は日常茶飯事でした」と話し、国のために尽くすのが当たり前だった当時の教育について説明。また、フィリピンでマラリアにかかった同僚兵士の枕元に手りゅう弾を置いたときの辛さや、武器も燃料も持たせないまま特攻隊員を出撃させた上官への憤り、出撃前夜に「お母さん、お母さん」と呼んでいた特攻隊員への思いなどを、声を詰まらせながら語りました。そして、天皇陛下の終戦の詔勅を聞いて「今までの苦労はなんだったんだ」と声をあげて泣いたが、「私は生きている。もう死ななくていい」と思ったことなどを伝えました。さらに、戦死した美術学校の生徒たちの未完の作品を展示している長野県の「無言館」や、優秀な台湾の留学生たちが日本の義勇兵として亡くなったこと、戦争責任についての資料の公開など、戦争にまつわるさまざまなエピソードを紹介しました。

馬場氏は、「今の日本は何でもできる住みよい国です。けれど若い皆さんにはもっと世界情勢や国のことを勉強してほしい。日本の未来を一部の人だけに任せてはいけません。今日聞いたことから何か一つでも生かして、平和の尊さを後世に伝えていってください」と訴えました。最後に本課程の鳥飼行博教授が、「日本の歴史は国内外でさまざまな継承がなされており、皆さんがどんな進路に進もうとこれまでの歴史と無関係に生きていくことはできません。私たちはそうした歴史を踏まえ、自分はどう考え、どういう立場を取るのか、今日の講演をきっかけに考えてみてください」と締めくくりました。聴講した学生からは、「戦争を経験した方の話は重みがありました。『本当は思い出したくない』と言いながらも、自分の経験を赤裸々に語ってくださった馬場さんに感謝したいと思います。自分が望まなくても出兵しなければならなかった同年代の若者たちのことを思うと胸が痛みます。平和についてあらためて考えなければならないと思いました」といった感想が寄せられました。

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