情報通信学部と平和戦略国際研究所が共催で研究セミナーを開催しました

情報通信学部と平和戦略国際研究所では12月11日に、研究セミナー「人間の安全保障を考える~サイバーセキュリティにおける大学教育の役割」をオンラインで開催しました。平和研では、人間の安全保障を理念に掲げ、サイバーセキュリティ、公衆衛生やヒトの移動をテーマに研究を進めています。昨今のIoT機器を使った犯罪やサイバーテロの多様化を受け、定期的にセミナーやシンポジウムを開催してきました。情報通信学部では、サイバーセキュリティ人材の育成を検討しており、今回は高輪キャンパスの大講義室での講演とパネルディスカッションをオンラインで配信しました。

初めに本学の山田清志学長があいさつに立ち、「新型コロナ禍によって予想もしなかったような事態が起きています。ウィズコロナ、アフターコロナと呼ばれる世の中で、大学としてもどのように教育環境に対応していくか考えていかなくてはなりません。本日のセミナーを通して皆さんとこの問題についての議論を深めるきっかけにできれば」と期待を語りました。

第1部の基調講演では、情報通信学部の三角育生客員教授が登壇。三角客員教授は、通商産業省(当時・現経済産業省)で安全保障貿易管理やコンピュータ2000年問題、危機管理といった業務に従事し、特にサイバーセキュリティにおいて2005年から20年まで内閣サイバーセキュリティセンター副センター長・内閣審議官、経産省サイバーセキュリティ・情報化審議官などをつとめ、政府のサイバーセキュリティ政策に長く従事してきました。講演では、先進国の中でも先駆けて制定されたサイバーセキュリティ基本法について紹介。政府内でサイバーセキュリティに携わる組織や体制について詳しく解説するとともに、18年7月に閣議決定されたサイバーセキュリティ戦略の概要に触れ、さらに企業の経営層を支えるエンジニアの重要性や米中の対立とサイバーセキュリティの関係、関連する法整備の状況など多岐にわたって解説しながら、「拡大するサイバーセキュリティの外縁に対応するためにも、組織として対応でき、危機管理やリスクマネジメント、地政学、政治、法律、経営、経済、心理など技術面以外の要素も兼ね備えた人材を育成しなくてはなりません。そのためには文理融合かつ学際的な高等教育のあり方が求められます」と提言しました。

第2部のパネルディスカッションでは、三角客員教授に加えて、山田学長、平和研の末延吉正所長、政治経済学部の藤巻裕之准教授が登壇。情報通信学部の濱本和彦学部長の司会進行で、「東海大学におけるサイバーセキュリティの取り組み」をテーマに意見を交換。まず藤巻准教授がモスクワ大学とのサイバーセキュリティ分野における連携と経緯、平和研が開催してきたシンポジウムについて紹介し、末延所長はコロナ禍とアメリカ大統領選など現代社会の状況を交えながら、大学教育の場でサイバーセキュリティ分野に関心を寄せることや人材育成の重要性を指摘しました。また、山田学長は本学におけるロシアとの交流や平和研設立の経緯、サイバーセキュリティ分野研究の現状に触れながら、「これまで得てきた知見は必ずしも学生の教育面に活用されているとは言えない状況です。今後は国内の他大学にはないこれらの知識を、教育活動に還元する策を考えていかなくてはならない」と展望を語りました。さらに三角客員教授が「これらの教育へのニーズは高く、2022年度の実施が検討されている東海大学の大規模な改組改編によって東京キャンパスが整備されるとのことですので、この環境を生かして人材育成に取り組んでいただければ」と話し、最後に末延所長が、「来年度には政府のデジタル庁もスタートし、よりいっそうデジタル社会が進んでいきます。理系のマインドにジャーナリスティックなマインドを加えることで、新しい人材が育っていきます。今回のセミナーをきっかけに、新しい時代に対応できる人材を育てる大学としてさらに充実を図っていきたい」とまとめました。