骨格標本制作のために埋めたアカボウクジラの骨を掘り起こしました

海洋学部海洋生物学科の大泉宏教授の研究室と東海大学海洋科学博物館の学芸員らが8月17日に、骨格標本制作のために博物館敷地内に埋めていたアカボウクジラの骨を掘り起こしました。昨年9月に静岡市古宿の海岸に座礁した体長565㎝のメスの個体を、大泉教授らが生態調査を目的に現地で解剖した後、骨格標本の制作のため博物館が引き取り、骨の周りに残った肉を自然分解させるため地中に埋めていました。

アカボウクジラは水深500mより深い水域を好むため沿岸部での発見事例が少ない種ですが、水深2000mをこえる深海がある駿河湾内に生息していることが大泉教授らの調査によって明らかになっています。博物館にはすでにアカボウクジラの頭骨標本が展示されていますが、今回座礁した個体は欠損や腐敗が少なく状態がよかったため、初めて全身の骨格標本を制作することになりました。地中に埋めた後は、学芸員が定期的に試掘し状態を確認、自然分解が順調に進んでいることが確認できたため、鯨類の専門家である大泉教授の指導のもと敷地内の土を手作業で掘り起こし、水とブラシで洗浄しました。

大泉教授は、「全身骨格標本作成は学術的にとても価値があること。将来的に海洋科学博物館で展示することで、『駿河湾にはこんなクジラがいる』と駿河湾を代表するクジラについて多くの人が知る機会になれば」と話しています。大泉研究室に所属し、今回の作業に参加した大学院海洋学研究科2年次生の久野友愛さんは、「全身の骨格標本の制作に携わるのは初めて。『どんな標本ができあがるのか』とわくわくしながら作業しています。この標本が博物館に展示され、多くの人の目に触れるのが楽しみです。また、大学院修了後も海洋にかかわる仕事をしたいと考えているので、解剖や標本制作で得た知識と経験を就職活動に生かしたい」と語りました。

今後は湯せんや漂白で骨を洗浄し、年内に博物館で展示する計画となっています。