屋代前教授の最終講義を開催しました

観光学部観光学科の屋代雅充前教授(現・非常勤講師)が1月11日に代々木キャンパス4号館講堂で、定年退職に伴う最終講義を行いました。屋代前教授は「風景を科学する~47年間の足跡」をテーマに講演。本学部の教職員・学生・卒業生・研究者ら約80名が聴講しました。

景観計画やランドスケープデザイン、まちづくりなどが専門の屋代前教授は、2008年度に非常勤講師として本学に着任。09年度は文学部教授として観光学部設置準備室で翌10年度に開設される本学部の立ち上げに携わり、学部がスタートすると同時に観光学科教授に就任して以来、学生の教育や研究活動を続けてきました。在任中には湘南地域の観光振興に関する地域連携活動・学外教育活動とともに、日本造園学会・土木学会・都市環境デザイン会議など各種学術団体や自治体等の委員(長)なども務め、講演活動などとともに学術振興にも寄与しています。18年3月で65歳定年のため退職し、今年度は非常勤講師として教育・研究に当たってきました。

屋代前教授は、自らの生い立ちを紹介し、大学受験時代に自然景観に興味を持ち、東京教育大学(現・筑波大学)農学部、東京大学大学院農学系研究科で学んだことで、研究者への歩みを始めたことを自身の卒業論文や修士論文を紹介しながら振り返り、その後勤めた企業で景観アセスメントや景観計画および観光・レクリエーション分野でのコンサルタント業務などに携わってきた経歴を披露。55歳定年まで勤めた株式会社ラック計画研究所では、研究員として送電線の景観対策手法検討・景観形成ガイドライン作成・道路景観整備マニュアル作成・農村景観デザイン検討などに携わった経験談や、各種講演および専門書籍や学会誌、専門雑誌等への論文執筆の成果から、「景観体験のメカニズム」を模式図で示し、「景観はあくまでも人間側の価値観・文化や行動可能性・アフォーダンスに基づいて評価されるものであり、単に対象の側の客観的な属性のみでは評価できません。したがって景観体験をコントロールするためには、景観対象の操作のみならず、騒音や振動、悪臭、危険性の有無など視点近傍の環境の操作や景観対象に関する意味・由来といった知的情報の操作も必要になる」と語り、さらに眺望の価値についての仮説を紹介しました。

また、本学で取り組んできた多様な研究活動の中から、科研費を活用した大規模なアンケート調査結果の分析によって、景観画像の分類根拠や各種歓迎表現の有効性の序列化を行い、「空間のホスピタリティ」に関する最新の研究成果も紹介。最後に「55歳で代表取締役を10年間務めた会社を定年退職し、大学に勤務するようになりましたが、学部も開設時から毎年約220人ずつ学生数が増え、授業負担も徐々に増えるという好条件で教員業務を開始することができて非常にありがたく感じました。また同時に、若い学生たちと接することで、私自身も若返るような気分で教員を続けることができたと思います。若さは何にも代えがたい能力です。今後はこれまで時間が取れずにきた旅行や趣味の写真撮影をしつつ、研究も継続して論文を執筆したい」と締めくくりました。

なお、最終講義の資料は下記からダウンロードできます。

屋代前教授最終講義 (1)_525.jpg

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