大学院生らが深海性チョウチンアンコウの一種を日本で初確認しました

大学院海洋学研究科海洋学専攻2年次生の犬塚敦己さんと同1年次生の日野田祥太さん(指導教員=海洋学部水産学科・髙見宗広講師)らの研究グループが、種子島沖と駿河湾で採集された深海魚が、日本初記録のシダアンコウ科魚類 Rhynchactis macrothrix であることを明らかにしました。この研究成果をまとめた論文は、7月20日付で日本魚類学会の和文誌『魚類学雑誌』(オンライン版)に掲載されました。

チョウチンアンコウ類は、水深数百メートルから2000mを超える太陽光がほとんど届かない深海域に生息しており、採集の機会が限られることから、分布や分類について未解明な点が多く残されています。Rhynchactis macrothrix も極めて希少な種で、これまで大西洋やインド洋、台湾近海などからわずか10個体しか知られていませんでした。今回の研究によって、本種が日本近海にも分布していることが初めて明らかになりました。研究に用いた2個体の標本は、本学の海洋調査研修船「望星丸」による深海調査で採集されました。2022年に種子島沖から体長3.7㎝、23年に駿河湾から同4.3㎝の個体がそれぞれ得られ、研究グループが頭部から釣り竿のように伸びる「誘引突起」の長さや、その先端にある付属物の形態などを詳しく調べた結果、いずれも Rhynchactis macrothrix であると判断しました。

本種が属する Rhynchactis 属も国内ではこれまで報告例がなかったことから、研究グループは属の標準和名として「シズクアンコウ属」、種の標準和名として「シズクアンコウ」を新たに提唱しました。「シズクアンコウ」という和名は、雌に見られる枝分かれした尾鰭条(びきじょう)と、丸みを帯びた頭部から尾部に向かって細くなる体型が、「樹木の枝先から滴り落ちる雨雫」を連想させることに由来しています。

犬塚さんは、日本近海の2海域から本種を発見したことで、その分布に新たな知見を加えるとともに、日本近海の生物多様性や、未解明な点の多いチョウチンアンコウ類の分布・分類を明らかにする上でも重要な成果になったと話します。日野田さんは、「論文をまとめるまでの過程はとても刺激的で、多くのことを学びました。今後もさまざまな深海魚について調査を続け、知見を増やしていきたい」と意欲を見せています。髙見講師は、「学生が自ら標本を採集し、検討を重ねて論文として発表できた過程が素晴らしい。本学が望星丸を所有し、数多くの調査を続けてきたからこその成果だと思います」と語っています。