医学部看護学科が「高校生のための外傷予防教室」をオンラインで開催しました

医学部看護学科では8月27日に、付属相模高校の生徒を対象とした「高校生のための外傷予防教室」をオンラインで開催しました。この講座は、外傷に関する知識を深め、意識を高めるとともに、予防の重要性について理解して主体的に安全な行動を選択する力を身に付けてもらうことなどを目的に実施しています。当日は、医学部付属病院の医師や看護師、本学科の教員による講義やドクターヘリのオンライン体験会、グループワークを行い、医療従事者を目指す生徒ら1、2年生25名が参加。看護学科の学生2名もグループワークをサポートしました。

初めに本学科の籠谷恵准教授が、講座の目的と具体的な達成目標を説明し、外傷の定義や高校生に多い外傷の要因、三段階の予防レベルといった、外傷に関する基礎的な事項について解説しました。続いて、医学部付属病院高度救命救急センターの青木弘道医師(医学部医学科総合診療学系救命救急医学講師)が、「外傷のメカニズムと救急医療の役割」をテーマに講義。外傷の原因別症例や、外傷の発生から医療機関に搬送するまでの“救命救急の連鎖”の重要性、多職種連携によるチーム医療の意義について解説しました。さらに、高度救命救急センターの役割についても説明。海上保安庁などと連携した洋上救急への協力、災害が発生した地域で救命救急活動にあたるDMAT(災害派遣医療チーム)の派遣、新型コロナウイルスによる重症患者への対応やワクチンの職域接種といった幅広い活動について紹介し、「外傷予防や救命救急への関心をさらに高めてもらえるとうれしい。いつか医療従事者になった皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています」と語りかけました。

休憩をはさんで、看護師キャリア支援センターの専任教員として救急看護認定看護師の育成に携わり、ドクターヘリに搭乗するフライトナースとしても活動する中嶋康広看護師が、「交通事故で搬送された外傷患者への救急看護とチーム医療」と題して講義。ドクターヘリによる救命事例をもとに、“命を助ける”ことを最優先する患者評価の手順や、常に患者の全身状態を観察しながら医師の動きを推察・サポートし、患者のプライバシー保護や家族に配慮するといった看護師の役割について説明しました。また、AED(自動体外式除細動器)を用いた一般市民による心肺蘇生の重要性や災害医療についても説明し、「“公助”だけでなく“自助”“共助”の意識を高め、自分の身を守るとともに周囲の人と助け合って行動する力を身に付けてほしい」と訴えました。続くドクターヘリのオンライン体験会では、中嶋看護師と操縦士らが、ヘリの特徴や機内に設置されている医療機器などを動画で紹介。各プログラムの後には参加者が積極的に質問する姿が見られました。最後に、看護学科の学生と教員を司会にグループワークを行い、学びを共有しました。

参加者からは、「医療に対するイメージが抽象的なものから具体的なものに変わりました。初期治療やチーム医療の大切さもよくわかりました」「災害発生時や周囲に傷病者が出た際、思っている以上に自分にできることがあると知りました。勇気を出して、今日学んだ処置法などを実践したい」といった感想が聞かれました。グループワークで司会を担当した看護学科3年次生の三枝りさ子さんは、「養護教諭を目指しているため、“教える側、伝える側”の視点からも多くの学びがありました。日ごろのトレーニングや準備の大切さについてもあらためて認識しました。常に冷静に適確な対応ができるよう、知識と技術をしっかりと身につけるとともに、それを向上させる努力を続けたい」と話していました。 本講座を企画・運営した籠谷准教授は、「従来は医学部付属病院がある伊勢原校舎で実施していましたが、昨年度から新型コロナウイルス感染症対策としてオンラインに切り替えました。参加者のアンケートから、本講座が医療への具体的理解につながり、一般市民による救急処置や災害への備えへの理解を深め、進路選択の参考になるなど、オンラインであっても多くの学びがあったことがうかがえました。高校生の興味や関心を踏まえて講座の目標や内容などを検討し、次年度以降のプログラムをさらに充実させていきます」と話していました。