村山司教授らはイルカが人の言葉をまねることを実証し国際学会誌に発表しました

本学部海洋生物学科の村山司教授らの研究チームは、イルカがヒトの言葉をまねられることを世界で初めて実証し、このほど国際比較心理学雑誌電子版(INTERNATIONAL JOURNAL OF COMPARATIVE PSYCHOLOGY)に発表しました。村山教授は飼育されているイルカ類を対象に、感覚・知能・行動の実験的解析を実施しています。今回、ヒトの言葉をまねることが実証されたイルカは村山教授が20年以上にわたり研究対象にしているもので、鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)で飼育されているシロイルカの「ナック」(推定29歳)です。

イルカは、口ではなく頭の上にある小さな呼吸孔(鼻)から鳴き声を出し、仲間同士のコミュニケーションなどに利用することが知られています。ナックは、水中で飼育員がマイクを使い声をかけると、呼吸孔からまねた音を出します。村山教授らはその音波や周波数を測定。丹念に分析し、飼育員の発音パターンとほぼ一致していることを突き止め、ナックがヒトの言葉をまねていることを裏づけました。

村山教授らはまた、ナックに対して2003年から言葉の訓練も実施。これまでにフィン(足ひれ)を見せると短い高音、バケツは低音、ゴーグルは長い高音、長ぐつは問いかけるような音など、見せた物に応じて異なる鳴き声を出させることに成功しています。さらに、ナックに記号を見せて「AならばB」「BならばC」と覚えさせ、「A」を示しただけで「C」を選ぶ三段論法的な思考ができることも確認しています。

イルカの認知機能の研究は世界でもまだ例が少なく、日本国内で同分野を専門に研究しているのは村山教授だけです。ナックが話す言葉は現在、「おはよう」「ピヨピヨ」など8つの言葉で、まだ「オウム返し」ですが、村山教授は「物に応じた鳴き声を発することができるので、言葉の意味を理解して発音することもできるはず。ゆくゆくは”何がしたい?”と聞いたら”エサを食べる”とか”遊びたい”と会話ができれば」と期待をふくらませています。

村山司教授らはイルカが人の言葉をまねることを実証し国際学会誌に発表しました