「第8回東海大学テニュアトラック制度国際シンポジウム」を開催しました

東海大学創造科学技術研究機構では11月18日に湘南キャンパスで、「第8回東海大学テニュアトラック制度国際シンポジウム 勅使河原蒼風の時代―近現代美術の保存・修復再制作をめぐって―」を開催しました。2010年度にスタートした本学のテニュアトラック制度(※)の実施状況や成果を報告するとともに、今後のあり方を考える機会として、毎年1回開いているものです。当日は、本制度をもとに採用されている教員が自身の研究を紹介したほか、芸術家・勅使河原蒼風をテーマに研究者や修復師らによる招待講演も実施。本学の教職員のほか、美術関係者や国立研究開発法人科学技術振興機構の職員ら約40名が参加しました。

第1部では、初めに同機構の木村穣副機構長(医学部教授)が開会のあいさつに立ち、「本学は2010年度に採択を受け、これまでに10名以上のテニュアトラックの先生方が専任教員を目指して本制度を活用しています。先生方には、将来的に東海大学を牽引する研究者に育ってほしい」と期待を語りました。続いて、呂國偉特任准教授、浅川倫宏特任准教授、内田剛特任助教、田口かおり特任講師が研究の進捗状況を報告。それぞれ参加者からの質問にも答えました。

第2部では同機構の長幸平機構長(情報理工学部教授)が登壇し、「本機構の活動の一つとして、テニュアトラック教員の企画力や人的ネットワークの広がりを実証してもらう場として今回、田口先生にこのような形の国際シンポジウムを企画していただきました。非常に優秀で著名な方々にご登壇いただき、大変ありがたく思っています。ぜひ活発な議論、発表をしてください」とあいさつしました。司会を務めた田口講師は、「近現代の、とりわけ今後、保存や修復を考えていかなければならない作品について、どのようなことができるのか、研究者の方々がどのようなことを考えているのかを、ケーススタディーを手掛かりに情報交換し検証していきたい」と語り、国内外の研究者3名が招待講演を行いました。田口講師も「勅使河原蒼風≪樹獣≫の調査と保存修復」と題して講演し、勅使河原蒼風が作品を制作するに至るまでの時代背景や、素材の選択をめぐる諸問題、代表作≪樹獣≫(一般財団法人草月会/東京都現代美術館委託)の修復プロジェクトを紹介。「このような事例を一つひとつ公開することが、複合素材からなる近現代美術の保存修復を理論と実践から再考するための契機となることを祈っています」と語りました。

なお、当日のプログラムと発表内容は以下の通りです。

【第1部】
◇開会あいさつ 木村穣副機構長
◇在籍中のテニュアトラック教員4名の研究進捗状況
呂國偉特任准教授「Optical Frequency Comb Enabled Optical Signal Processing」
浅川倫宏特任准教授「ソフォラフラバノン H の全合成」
内田剛特任助教「知的財産の適切な保護のための方策‐組み立て式の棚の保護に関する事例を通じた検討-」
田口かおり特任講師「ジャン=フランソワ・ミレー作品の光学調査と新たな知見 《角笛を吹く牛飼い》(1950)と《農場へ帰る羊飼い》(1860年~65年)を中心に」

【第2部】
◇あいさつ 長幸平機構長
◇招待講演1 加藤瑞穂氏(美術史家・大阪大学総合学術博物館招へい准教授)
「具体美術協会の再制作作品(Reconstructed Works of Gutai Art Association)」
◇招待講演2 アン・アン・ダイアナ・テイ氏(メルボルン大学 Grimwade 文化財保護センター、研究員)
「支配的言説をこえて:シンガポールの油彩絵画(1940-60 年代)保存のための意思決定をめぐるエコシステム(Beyond a dominant discourse: Decision-making ecosystem for the conservation of Singaporean oil paintings (1940-60s))」
◇講演 田口かおり特任講師
「勅使河原蒼風≪樹獣≫の調査と保存修復( Research, Conservation and Restoration of Jyu-Jyuu (wood Beasts))」
◇招待講演3 アントニオ・ラーヴァ(修復家・アントニオ・ラーヴァ保存修復協会代表・ヴェナリア国立中央修復研究所教授)
「変化の証言としての現代美術の保存と修復(Conservation and Restoration of the Artworks by Sofu Teshigahara and the Artists in the Same Period: Case studies in Italy)」

※テニュアトラック制度
「公正で透明性の高い選考により採択された若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積むことができる仕組み(文部科学省資料より抜粋)」を指します。本学では、文部科学省が公募した平成22年度科学技術振興調整費(現・科学技術人材育成費補助金)「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラムの採択(5年間)を受けた提案「国際的研究者を育て得るメンター研究者育成」にもとづいて、本制度を導入。実施組織として創造科学技術研究機構を立ち上げて国際的若手人材の育成を推進しています。

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