住吉講師らの研究グループによりミズクラゲコラーゲンは皮膚再生促進効果を有することが見出されました

2016年03月07日

医学部基盤診療学系 住吉 秀明 講師を中心とする研究グループは、この度、ミズクラゲコラーゲンが優れた皮膚再生促進効果を有することを見出しました。なお、本研究は株式会社海月研究所との共同研究、ならびに同社の支援を得て実施されたものであり、本研究成果は、第15回日本再生医療学会総会 一般演題 皮膚2「コラーゲン成形の改良による優れた人工真皮の検討(副題:ミズクラゲ由来コラーゲン成分による皮膚再生促進効果)」(3月19日(土)9:50~10:50、会場:大阪国際会議場 第7会場 会議室1007)において発表を行う予定です。学会での取材を希望される場合には、下記HPをご確認の上、取材申請の手続をお願いします。

第15回日本再生医療学会総会
HP:http://www2.convention.co.jp/15jsrm/press/index.html


図は、人工真皮移植6日後の皮膚創傷モデルマウスの表皮細胞と線維芽細胞の様子です。図1のマウスは、ミズクラゲコラーゲンが配合された人工真皮を移植したもので、表皮細胞並びに線維芽細胞の遊走が著しく促進されています。

<本研究成果のポイント>
◇ミズクラゲコラーゲンが皮膚の再生促進効果を有することを見出しました。
◇ブタやウシのコラーゲンを用いた市販品より、高い皮膚再生効果を持つ人工真皮の作製方法を開発しました。
◇特に表皮細胞の再生が早く、表皮の自家移植が不要となることが期待できます。
◇漁業者にとって厄介者で廃棄されるクラゲの活用で、人工真皮の低コスト化が期待できます。

皮膚をつくる細胞には、いわゆる「肌」を形成する表面の表皮細胞と、深部でコラーゲンをつくり、ハリをもたらす線維芽細胞があります。Ⅱ度熱傷以上の火傷など広範囲で皮膚を失う深刻な傷を負った場合の治療法としては、ウシやブタのコラーゲン成分で作られた人工真皮(人工皮膚)を欠損部に貼付する方法が一般的です。しかしながら、現在の人工真皮では特に表皮細胞の回復に時間を要することから、それを補うために適当なタイミングで表皮を自家移植する必要があり、よって患者さんの負担が大きいという問題がありました。

今回、東海大学の研究グループは、ブタコラーゲンのみで作製した人工真皮と、ブタコラーゲンにミズクラゲコラーゲンを配合した人工真皮を作製し、動物実験により皮膚の再生効果を比較しました。その結果、ミズクラゲコラーゲン配合の人工真皮を貼付したマウスの皮
膚は、表皮細胞と線維芽細胞が同時に活性化され、ブタコラーゲンのみの人工真皮の場合と比べ、倍以上の速さで皮膚が再生されることを確認できました。海洋生物由来のコラーゲンは安価であり、狂牛病などの人畜共通感染症のリスクもありません。クラゲのコラーゲンは、わたしたち動物のコラーゲンとほぼ同じ3重らせん構造を持つ線維性タンパク質であり、抗原性も低いという特徴があります。
近い将来、ミズクラゲコラーゲンを配合した人工真皮の実用化により、現行の市販品と比べ高い皮膚再生効果を有し、表皮の再移植が不要な人工真皮を低価格で提供できることが期待されます。

■本研究の背景・経緯
一般的に肌(皮膚)と呼ばれている部分は、「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層から構成されています。Ⅱ度以上の火傷等で真皮までの広範囲が欠損した場合、その真皮を再生させるためには、「表皮細胞による傷部分の閉鎖(上皮化)」と「線維芽細胞によるコラーゲン組織の再生(肉芽の形成)」が同時に速やかに進行されることが必要です。現在は、これらの治療にウシやブタのコラーゲンで作られたスポンジ状の人工真皮が利用されています。この人工真皮を受傷部(欠損部)に貼付すると、スポンジ部分に線維芽細胞等が入り込んできて、通常2~3週間で真皮組織に置換されますが、現在の人工真皮では表皮細胞の回復(上皮化)が遅いため、これを補う目的で後日、表皮の自家移植が必要となり、患者さんの負担が大きくなる問題点があります。
一方、魚のウロコや皮膚に含まれる海洋生物由来のコラーゲンは、BSE(狂牛病)などの人畜共通感染症のリスクがなく、且つ安価なコラーゲンです。なかでもクラゲのタンパク成分のほとんどがコラーゲンです。ミズクラゲのコラーゲンは、まとまって線維構造をとることはなく、また水溶性であるという特徴があります。そこで東海大学の研究グループは、クラゲコラーゲンを利用した人工真皮の皮膚再生促進効果を低コストで実現できる可能性を評価するため、㈱海月研究所様よりミズクラゲコラーゲンを提供頂き、実験を開始しました。

■本技術の独自性
ミズクラゲコラーゲンは、安価で感染症のリスクもない有用なコラーゲンですが、水溶性で形状保持ができないため、そのままでは人工真皮としての利用は困難であると考えていました。本技術では、ブタコラーゲンにミズクラゲコラーゲンを40%~60%配合したコラーゲンスポンジとフィルムの作製方法を開発しました。その方法で作製したスポンジとフィルムを重ねた人工真皮と、ブタコラーゲンのみで作製した人工真皮をマウス実験により比較したところ、ミズクラゲコラーゲンを配合した人工真皮では、ブタコラーゲンのみの場合に比べ線維芽細胞の遊走が増強し、加えて表皮細胞もフィルム加工された表面をすべるように伸長し、上皮化の促進が実現されました。このことは自己移植が必要となる従来の問題点を解決できることを示しています。

用語の解説
◇表皮細胞:皮膚の最外層である「角質」をつくる細胞。外界と体内のバリアーを形成する。
◇線維芽細胞:表皮の下にある真皮を構成する細胞。皮膚組織の主成分であるコラーゲンをつくる。
◇人工真皮:広範囲に皮膚を欠損したときに用いられる、人工物で出来た移植片いわゆる
人工皮膚。動物由来のコラーゲンスポンジを主成分とする。
◇自家移植:自分自身の体の一部を欠損場所に移植するもの。皮膚再生では人工皮膚を貼
った部所の真皮組織の回復を待ち、自身の表皮組織を自家移植によって植皮する。
◇細胞の遊走:細胞が自発的な運動能力を持って移動すること。
◇Ⅱ度熱傷:真皮に及ぶ熱傷のこと。熱傷は深さによりⅠ度からⅢ度に分類されている。

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