八幡准教授の研究チームによる血液再生促進薬の開発に関する画期的な成果を収めた論文が医科学研究分野でトップレベルの学術論文誌に掲載されました。

2017年08月15日

「医学部基盤診療学系の八幡 崇 准教授と安藤 潔 教授らの研究グループが、血液再生促進薬の開発に結びつく新しい知見の発見に成功し、その成果が、2017年8月10日に、論文誌『Blood』に掲載されました(doi: https://doi.org/10.1182/blood-2017-02-767384)。八幡准教授らの研究グループは、「再生」を促進する新薬を開発しQOLの飛躍的な向上を目指していることは、本サイトの「特色ある研究(下記リンク参照)」でもお知らせしていますが、今回の成果公表も大学の特色ある研究が社会を豊かにすることに大きな貢献をするものと期待されています。

私たちの体を流れている血液には、酸素を運ぶ赤血球や、病原体を排除する白血球など、健康を維持するために必要な様々な機能を分担する、およそ10種類の多種多様な血球細胞によって構成されています。この多種多様な血球細胞のすべては、造血幹細胞と呼ばれるたった1種類の細胞から供給されます。造血幹細胞が必要に応じて、赤血球や白血球を産生するのです。通常、造血幹細胞は骨の中心部にある骨髄にとどまっていますが、出血などが起こると、骨髄から末梢循環血中に飛び出して全身を巡回したり、再び骨髄へ戻って行ったりするという非常にダイナミックな運動能を示します。この造血幹細胞が骨髄を出たり入ったりしながら、すべての血球細胞を産生する性質を利用した医療が、骨髄移植を代表とする血液再生医療です。

白血病(血液のがん)などの重い血液疾患では、血球細胞が正常に機能しなくなってしまっています。血液再生医療は、患者さんの異常な血球細胞を薬や放射線で除去した後に、健康な人の骨髄を移植して、その骨髄に含まれる造血幹細胞に血球細胞を産生させることによって、健康な人に由来する正常な血球細胞に置き換えることを目指します。しかし、異常な血球細胞を除去するための処置や、空っぽになってしまった骨髄が元通りに回復するまでの期間は、患者さんにとって非常に負担が重く、重大な危険を伴うものです。したがって、骨髄にとどまっている造血幹細胞がどのようにして運動能を獲得し、再生能を発揮するのかを明らかにすることは、より安全で効率的な血液再生医療を実現するための大事な知見となります。

八幡准教授らは、造血幹細胞の増殖にブレーキをかける物質として知られていたTGF-betaが、実は造血幹細胞が骨髄にとどまること、つまり運動能にもブレーキをかける役割があることを発見しました。増殖や運動能の抑制は、どちらも造血幹細胞の劣化を予防し、人の一生涯にわたって血球細胞を供給し続けるために必要な大事な機能です。さらに、TGF-betaが運動能を抑制するメカニズムとしてPAI-1と呼ばれる物質が中心的な役割を果たすことを突き止めました。PAI-1活性を抑制すると、造血幹細胞の運動能が増強し、血液再生反応が効率化します。驚いたことに、細胞の外、つまり体液中でのみはたらくと考えられていたPAI-1が、細胞の内部において細胞の運動能を制御するなど様々な機能を発揮することを明らかにしました。

八幡准教授は、「私たちは、先進生命研の平山 令明 教授や東北大学の宮田 敏男 教授らと連携して、PAI-1の活性を抑制する薬剤の開発を進めてきました。この薬剤には造血幹細胞の運動能や再生能を高める効果があることから、血液再生促進薬となる可能性が高く、医学部の安藤教授を中心とした臨床試験を進めているところです。飲み薬によって再生が促進するという新しいコンセプトに基づく画期的な新薬となることが期待されます。私たちは、基礎研究の成果から薬剤を開発し、臨床試験を実施するという東海大学独自の『独創的な創薬基盤』を確立しました。今後は医学領域だけでなく全学の先生方と連携し、様々な疾患の再生医療に有効な新薬を開発することによって、QOLの向上を目指す本学のブランドとなるような研究にしていきたい」と話しています。

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