岡村准教授の研究グループが、生体組織の乾燥とぶれを防ぎつつ、高解像度での観察を可能にする新技術を確立しました

2017年08月21日

左から、張博士、岡村准教授、増田さん
工学部応用化学科の岡村陽介准教授(マイクロ・ナノ研究開発センター)と国立大学法人北海道大学電子科学研究所の根本知己教授を中心とする研究グループが、生体組織の乾燥とぶれを防ぎつつ、高解像度での観察(イメージング)を実現する新発想の観察試料作成技術「撥水性超薄膜ラッピング法」を確立しました。本研究の成果は、2017年8月11日(金)ドイツの学術誌『Advanced Materials』(DOI:10.1002/adma.201703139)に掲載されました。

近年では顕微鏡の性能向上はもちろん、臓器などの生体組織を透明化する試薬が開発されたことで、生体組織の特定のタンパク質を奥深くまで観察(イメージング)することが可能になっています。しかしその一方で、従来の試料作成法ではその乾燥を防げず、慣性の力でぶれてしまうといった問題がありました。そのため長時間の観察ができず、高解像度の画像を得るためには各研究者の技術と経験に頼らざるを得ないという課題がありました。

岡村准教授らの研究グループは今回、旭硝子株式会社製のフッ素樹脂「サイトップ®」を材料とする撥水性超薄膜を開発。これを試料上にかぶせることで、高い保水性と保定力を持たせることを可能にしました。また、乾燥を防ぐために生体組織をヒドロゲル(水が含まれるゲル状の物質)で包むという従来の方法がありますが、せっかく生体組織を透明にしても、もとの不透明な状態に戻ってしまうという課題がありました。そこで「撥水性超薄膜」をかぶせると透明性が維持でき、長時間観察できることも明らかにしました。また、超薄膜を使って生体組織を長時間3次元で観察する技術も開発。実際に透明化した厚さ1㎜の脳切片を共焦点顕微鏡を用いて観察し、厚さ方向は1㎛間隔で40~44㎛分を、縦横は761×756㎛分をそれぞれ撮影する技術も確立しました。この技術により、これまでの研究者の経験やノウハウに頼ることなく、生体組織の観察試料を作成し、高解像度で長時間観察することが可能になりました。本研究では、岡村准教授の指導のもと、2015年度工学部応用化学科卒業の増田愛美さん(現・ニチアス株式会社勤務)が撥水性超薄膜の製造を担当。マイクロ・ナノ研究開発センター特定研究員の張宏博士が超薄膜を利用したイメージング技術の開発を担いました。

岡村准教授は、「増田さんや張博士、北海道大学の根本教授など多くの方々の尽力と協力を得てこの技術を確立できたことを大変うれしく思います。これにより、生体組織を長時間にわたって観察することが可能になり、神経細胞がつながっている様子を高解像度で観察するといったこれまで不可能だった研究も可能になると期待しています。今後も研究を重ね、この超薄膜を多くの研究者に使ってもらえるよう工夫していきたい」と話しています。   

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