品川キャンパスで11月8日に、2025年度品川キャンパス公開セミナーを開催しました。国際・経営・観光・情報通信・政治経済(政治学科・経済学科)の5学部6学科の3・4年次生が学ぶ本キャンパスでは、学びや活動を地域に広く還元することを目的に、毎年セミナーを開催しています。今回は、前田成東教授(政治経済学部政治学科)と長谷川恭子准教授(情報通信学部情報通信学科)による2テーマ・2部構成で実施し、近隣住民や学生、教員など、約50名の方々が聴講されました。
第1部では、前田教授が「危機に直面する公共交通~住民が担う?路線バスを中心に~」をテーマに講演しました。過疎地を中心に鉄道やバスの廃止、縮小が進み、厳しい状況に直面している公共交通の中でも特にバスに着目して解説。旅行好きながら自動車運転免許を持たない自身の視点から、移動手段確保の諸方策について考察し、路線バスをめぐる国の制度変更や国土交通省の取り組み、自治体の役割の拡大についても言及しました。専門事業者ではなく住民が担う路線バスの運行などの例を取り上げ、運営状況が厳しいバスの乗り場に「このままだと運行中止」のポスターが掲示されている写真なども紹介。「地域のバスを守るためには何よりも安定した利用者が必要です。衣食住とともに、自由な移動が確保される“交通権”という考え方を再認識することが重要になります。本キャンパスの目の前には港区のコミュニティバス『ちぃばす』が通っています。交通手段確保のためにも、ぜひ皆さんも日ごろから路線バスを利用してください」と呼びかけました。


第2部では、長谷川准教授が登壇し、「3次元計測データの可視化~デジタルアーカイブによるモノとコトの保存~」をテーマに講演。現存する文化財が、写真だけではなく3次元計測により、幅や奥行き、高さといった3次元位置データとして容易に保存することができるようになっている現状を紹介しました。長谷川准教授は、多様な3D計測の方法を丁寧に説明し、国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」や、東京都が主導する建物や街の様子を再現する3D都市モデル「デジタルツイン実現プロジェクト」など、最新の動向についても解説。学生たちと手掛けている本キャンパス近隣の史跡「高輪大木戸跡」の計測などの実例も紹介し、「可視化と保存は、理解と継承を支える両輪です。そのための3次元計測は現実を理解し未来へ伝えるための技術であるとともに、記憶を継承する行為でもあります。デジタルアーカイブは社会と文化をつなぎ、形だけではなく意味をも残す手段となります」と締めくくりました。


聴講者からは、「港区のバスや近隣の史跡の調査など、身近な地域の事例を取り上げてくださり、とても興味深く聞きました」「大学の中の様子もわかり有意義な体験でした」などの感想が寄せられました。