湘南キャンパス中央図書館で「サヘル・ローズ監督作品『花束』上映と語り合いの会」を開きました

湘南キャンパス4号館の中央図書館(ライブラリウム)で12月3日に、本学卒業生で俳優、タレントとして活躍するサヘル・ローズさんの初監督作品である映画『花束』の上映と感想を語り合う会を開きました。今年4月にリニューアルオープンした本図書館は、「OCEAN(海)」「ISLANDS(島々)」「CONSTELLATION(星座)」「UNIVERS(銀河)」の4つにゾーン分けし、それぞれのテーマに沿った本を配置。従来の図書館機能である自主学習や資料閲覧に加え、「開かれた空間」としてアクティブラーニングやプレゼンテーションスペースも設置しています。

『花束』は、児童養護施設出身の8名の若者が自らの経験や心情を語るドキュメンタリーとしてのパートと、その8名が役者として劇を演じるフィクションのパートが交錯する実験的作品で、若者たちの未来への希望を描くと同時に、社会的な理解と支援の必要性を訴えています。今回の試みは、サヘルさんがパーソナリティーを務めていたTOKYO FMのラジオ番組「SDGs学部ミライコード」に、本図書館長で文化社会学部広報メディア学科の水島久光教授が出演したことがきっかけとなり、この施設を活用したイベントとして発案したものです。水島教授のゼミナールに所属する学生約10名も参加して、リニューアルした中央図書館にサヘルさんを招き、学生や教職員に語り合ってもらう機会をつくろうと準備を進めてきました。

「ISLANDS」の設備を活用して実施した当日は、まず約30名の参加者がプレゼンテーションスペースで『花束』を鑑賞。続いてミーティングスペースでグループに分かれて、映像表現で印象に残ったポイントや出演者たちのインタビューと物語の関係性、児童養護施設と出身者が置かれた社会的な現実など多様なテーマで語り合いました。さらにゾーンの中央を占める講演スペース「Coral(コーラル)」に移動して、水島教授とサヘルさんが登壇。水島教授は、「2024年10月に東京都内で開かれた上映会に参加してこの作品に出合い、ぜひ本学の皆さんと一緒に鑑賞し、感想や社会的意義を語り合い、共有したいと考えてきました」と話し、サヘルさんは、初めて映画監督を務めることになったきっかけや、製作を進める中で生まれたエグゼクティブプロデューサーを務めた岩井俊二氏らとの交流の様子、映画では描かれなかった出演者個々のエピソードといった制作秘話を披露。参加者からの質問にも答えながら、「初めての映画製作はゼロからのスタートでしたが、児童養護施設出身者への差別、偏見をなくしたいという思いで一つひとつの作業を進めてきました。“よく分からなかった”という感想を持つ方もいらっしゃいますが、それもある意味では正しく、一本の映画で“知る”ことはできても、すべて“分かる”ことは不可能です。皆さんも与えられた情報だけで終わらせるのではなく、一歩踏み出してください。映画を見ただけで社会は変わりませんが、見た方たちが彼らの思いを知り、“生きることの大切さ”について考えてくれればうれしいです」と語りました。

水島ゼミナールのプロジェクトリーダーとして運営を担った大塚凜さん(4年次生)は、「図書館のスタッフの皆さんと連携して準備に取り組んできましたが、運営側の私たちも参加者の方たちと一緒に映画を見て、意見を交わすことができて、非常に有意義な経験を積むことができたと思います。特に、先生方や職員などいわゆる大人の方々とのディスカッションは新鮮で、緊張感もあり、人それぞれの価値観に触れる中で、今後の人生に生かせる新しい発見がありました」と話していました。また、参加した学生たちからは、「図書館は本を読んだり、勉強したりする場所というイメージでしたが、映画の上映もできる設備があることに驚きました」「図書館を利用する機会は少ないのですが、また機会があればこのような催しに参加したい」といった感想が聞かれました。