公開シンポジウム「持続可能な彫刻 アートが拓くユニバーサルな可能性」を開きました

2020年02月03日

課程資格教育センター主催の公開シンポジウム「持続可能な彫刻 アートが拓くユニバーサルな可能性」(共催=松前記念館、後援=地域連携センター、屋外彫刻調査保存研究会、真鶴町政策課)を、1月12日に湘南キャンパスで開催しました。本センターでは、屋外彫刻の保存管理や誰もが楽しめる「ユニバーサル・ミュージアム」などのテーマを取り上げて毎年シンポジウムを開催しています。今回は、屋外彫刻を守り後世に伝えるために必要な要素や活動を議論することが目的で、市民や学生、研究者ら約70名が参加しました。

第1部では、アートを活用したまちづくりに取り組んでいる神奈川県真鶴町の活動について、専門家と行政の担当者、彫刻家が登壇しました。最初に、水沢勉氏(神奈川県立近代美術館館長)が、1963年に同町が各国から彫刻家12名を集めて行った野外彫刻展「世界近代彫刻シンポジウム」が残した課題を紹介。町内で行われた制作活動の様子はメディアでも大きな注目を集めたものの、展示会終了後にそれらの作品が町の遺産としては残らなかったことなどを紹介しました。その後、彫刻家の冨長敦也氏と北川太郎氏、卜部直也氏(真鶴町政策課戦略推進係長)が、町が行っている「石の彫刻展」について講演。冨長氏と北川氏は、作品の制作風景や市民参加型で行ったワークショップの様子や活動に込めた思いなどを紹介しました。また、卜部氏は展示会の概要を説明し、「長く中断していた『石祭り』が復活するなど、波及効果も出ている。プロジェクトが終わった後も、住民とアートがつながるような活動にしていきたい」と語りました。

第2部では、美術史と修復保存、文化人類学の専門家がそれぞれの立場から「アートを守り後世に伝えるために必要な要素」についてコメント。野城今日子氏(東京文化財研究所アソシエイトフェロー)が、歴史の中で保存されなかった彫刻や一度は撤去されたり、壊れたりしたものの再建された彫刻の事例を紹介し、「彫刻を守るのは作家でも美術史家でもなく、市民などの第三者しかない」と語りました。続いて、田口かおり講師(創造科学技術研究機構)が各国で行われている保存修復活動の事例について語り、作品に用いられている組成や修復歴などの記録を残し、公開することの重要性を指摘。その後、広瀬浩二郎氏(国立民族学博物館准教授)が長く残る「持続可能な彫刻」の条件について、「点から始まって宇宙を感じさせ、気づきが多く、五感で感じられ、作家・鑑賞者相互のコミュニケーションが生まれて人々の日常生活にリンクする作品」という条件がそろう作品が残るのではないかと提案しました。

その後は会場を交えてのディスカッションも実施。企画運営を担当した篠原聰准教授は、「持続可能な彫刻は、彫刻を守り伝えるという人々の強い意志があってはじめて成立するものであることが明確になりました。その実現のためには、博物館や美術館だけでなく自治体、大学、民間などの能動的な関与も必要となります。今回のシンポジウムをきっかけに、大学近隣の自治体や博物館・美術館などをつなぐゆるやかなネットワークを立ち上げることができました。今後は、このネットワークを核に、屋外彫刻のメンテナンスなど地域に根差した活動を展開していきたい」と語っています。

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