海洋学部生が開発した和食に合うパン「出汁パン」が静岡市内のベーカリーで販売中

海洋学部水産学科食品科学専攻の後藤慶一教授の研究室に所属する浅野滉人さん(4年次生)がこのほど、静岡県内でパン店「ピーターパン」を4店舗運営する株式会社ウィンウィンと共同で、「和食に合うパン」をコンセプトとした「出汁(だし)パン」を開発。開発段階からK-mixラジオ(静岡エフエム放送)の番組「おひるま協同組合」内で商品名が公募され、「駿河の国から”和”(なごみ)だしパン」と命名されました。昨年12月20日から、ピーターパンするが工房(静岡駿河店)で販売が始まっています。

出汁パンは浅野さんが卒業研究の課題としてパンを題材にしたいと後藤教授に申し出たことで開発がスタート。同研究室出身でパンメーカーに勤務する卒業生に相談するとともに、パンの製造・販売に関しては、静岡市に拠点を置くパン店「ピーターパン」を運営する株式会社ウィンウィンに協力を依頼。快諾を得たことから今回の取り組みが実現しました。開発にあたって浅野さんは、パンに使う粉の種類、油脂の種類、形状、焼き目、要となる出汁の種類と、さまざまな組み合わせで試作を繰り返しました。指導にあたった後藤教授は、「静岡県はかつお節の一大産地でもあり、水産学科食品科学専攻で取り組むには格好のテーマです。しかし、出汁の種類の検討には大きな苦労がありました。たとえば、同じかつお節でも製法の差異がパンに大きく影響してしまうため、昆布やシイタケなどとの組み合わせを含めると、相当な試作回数となります」と振り返ります。

最終的には、清水区蒲原の有限会社西尾商店製のかつお出汁が最もパンとの相性がよいと判断しました。浅野さんは、「ほかにも、パンに使用する粉や食感、油脂なども基礎から検討しました。油脂の種類やパンの形状、焼き目などにもこだわりました」と語ります。さらに、ほかの食材との組み合わせについては調理科学が専門で短期大学部食物栄養学科の高塚千広准教授が監修。高塚准教授は、「かつお出汁のうま味はこれまでのパンにはない味わいです。和食は“うま味とうま味の相乗効果”が特長ですから、バターソテーしたシイタケや海苔、茹でシラス、竜田揚げなどとの相性が特によいと考えられます」と話しています。

こうして完成した出汁パンは、ピーターパンで焼かれた作りたてのプレーンとかき揚げサンドの2種類が店頭に登場しました。ラジオ番組でのPRの効果や地域の人気店ピーターパンということもあり販売開始から好評を得ており、12月中は1日に約60個から70個が並べられ、週末には売り切れることも。ピーターパンするが工房の河合瑞季店長は、「はじめは出汁とパンが合うのか疑問もありましたが、ほのかに出汁の香りが漂う配合量にできたと思います。さらに、“和食に合う”ことを目指して米粉を使い、さらにロールパン状にしたことで食感も上がりました。お客さまの中には、珍しいパンに興味をもって手に取ってくれる方も多いので、今後はリピーターが増えてくれれば」と期待を寄せます。株式会社ウィンウィン代表取締役社長で本学海洋学部卒業生の甲賀照之氏は、「当社にとってもチャレンジングで面白い試みでした。地域の名産品を使った商品であり、話題になってくれればうれしい」と語ります。

「実際の店舗で販売されるパンの開発は研究室としても初めてのことでしたが、浅野さんの努力はもとより、多くの方たちの協力を得て実現まで至りました。今後はこの成果を生かして、“頭にいいパン”や“健康にいいパン”の開発などにつなげられれば」と後藤教授。浅野さんは、「小学生のころにパン職人が主人公のアニメを見て、パン作りにあこがれを持っていたこともあり卒業研究のテーマにパンを選びました。ラジオ番組やパン屋さんとのコラボレーションに初めは戸惑いましたが、完成までの道のりの中で商品開発の大変さや、品物に思いを込めることの大切さを学べたと感じています。卒業後はパンメーカーに就職するので、この経験を生かしていきます」と意欲的に語りました。

なお、「“和”だしパン」は今後、2月末日まで挟み込む具材の種類もさらに充実しながら、ピーターパンするが工房(静岡駿河店)とあおいの杜(静岡葵店)で販売される予定となっています。

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