樋口廣士助教と幸谷愛教授らのEBウイルス陽性B細胞リンパ種の悪性化機序に関する研究が血液学のトップジャーナル『Blood』誌に掲載されました

2018年07月09日

東海大学総合科学技術研究所の樋口廣士助教と医学部医学科の幸谷愛教授(内科学系血液・腫瘍内科学)らの研究グループが、がんウイルスであるEBV(Epstein-Barr Virus)の感染により発症するB細胞リンパ腫の腫瘍を悪性化させる「EBV由来小分子RNA」の働きを解明。4月22日(日本時間23日)、血液学のトップジャーナルである『Blood』誌に論文が掲載されました。この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて取り組んだものです。本成果により、EBV由来小分子RNAがEBV関連疾患の診断マーカーや治療標的として利用できる可能性があると期待されています。
 
本研究は、EBV陰性のB細胞リンパ腫に比べて治療効果の低いEBV陽性B細胞リンパ腫の病態や悪性化の機序を解明し、新たな診断法や治療法の開発につなげることを目的としています。研究グループは、ヒトの生体内に近い環境を模倣した「造血系ヒト化マウス」に2種類のEBV株を感染させ、腫瘍化した細胞から分泌されるエクソソーム(タンパク質などを運搬し、がん化を促すとされる小胞)に含まれる小分子RNAの働きを比較分析。その結果、EBV由来小分子RNAが、本来は異物を排除する働きを持つマクロファージの性質を変化させることにより、腫瘍の温床となる炎症性ニッチの形成を促すことを明らかにしました。

中心になって研究に取り組み、論文を作成した樋口助教は、名古屋大学工学部、同大学院化学・生物工学専攻で遺伝子工学を研究。「マクロファージやRNAに関する研究を深め、病気の原因を究明して診断や治療に役立てたい」と、2016年度から幸谷教授の元で研究を進めてきました。「6月末には「第14回血液学若手研究者勉強会」で講演する機会をいただき、今後の血液学を牽引する研究者らと交流してとても勉強になりました。また、『麒麟児賞』という栄誉ある賞もいただき、大変光栄です。ヒトやマウス以外のモデル生物を活用した研究にも興味があるので、そこで得た知見を生かして新たな治療法の確立に貢献したい」と意欲を見せています。

幸谷教授は、「他にさきがけて造血系ヒト化マウスを作製するなど、医学部にはEVB関連疾患やRNAを研究する人材、技術、環境が整っており、若い研究者たちも粘り強く、真摯に研究に取り組んでいます。本成果については、理化学研究所などが主催する国際シンポジウムや分子生物学会、生化学学会、RNAi研究会などからも招待講演の依頼があるなど、研究者らから注目されています。6月に香港で開かれた私的セミナーに招かれて講演した際は、EBV由来のがん患者が東アジアに多いこともあって大きな反響がありました。海外の研究者との共同研究もさらに積極的に進めたい」と話しています。

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