アルメニアのサルキシャン大統領による講演会を開催しました

アルメニア共和国のアルメン・サルキシャン大統領による講演会「数学モデリングと地政学 グローバルリスクのグローバル行動」を、10月25日に高輪キャンパスで開催しました。天皇陛下の即位の礼に参列するため、サルキシャン大統領が来日されたことに合わせて企画したものです。創立者・松前重義博士は1966年に「日本対外文化協会」を設立し、文化・学術交流や学生・研究者の相互派遣などを展開。本学も連携して、ソ連圏・東欧諸国との民間交流を展開してきました。現在の駐日アルメニア大使であるグラント・ポゴシャン大使も日本対外文化協会の奨学生として来日し、日本で学んだ一人で、今回の講演会は大使の尽力によって実現したものです。講演会には200名をこえる本学の学生と付属高輪台高校の生徒、教職員が参加しました。

サルキシャン大統領は、理論物理学と数学が専門の科学者で、エレバン国立大学やケンブリッジ大学、ロンドン大学数学研究所などで活躍。1991年に在イギリス大使館に勤務した後、欧州連合のアルメニア代表やベルギー、オランダ、ルクセンブルク、バチカン、イギリスの大使を歴任。2018年3月に同国の第4代大統領に就任しました。

当日は、第4次産業革命を迎えた世界の未来像について講演しました。数学や物理学に支えらえた科学の進歩によって、モバイルフォンが爆発的に普及し、20年前には不可能だと思われていたことが現代では実現できていると指摘。そうした未来を、50年前に日本の作家である大江健三郎が予想していたことを紹介しました。そのうえで「高度な数学に支えられた人工知能の普及によって社会全体が変わっていく」と説明。自動車は4つの車輪とバッテリー、ソフトウェアがあれば作れる時代となり、医療ではビックデータを使った解析技術によって9割を超える病気の診断できより長寿命で幸福な時代がやってくるほか、人々の生活はよりバーチャルな世界で過ごす時間が長くなるのではないかと語りました。

そのうえで、「これまでは天然資源を持つ国が栄えたが、今後はどれだけ優秀な頭脳を持つかが重要になる。未来のためには、若い人たちによるスタートアップ企業の発展が重要になるのです。失敗することを恐れるのではなく、何も決断しないことを恐れてください。失敗はより賢くなる糧になります。かつてシンガポールや香港が栄えた背景には海の存在がありました。海は物流、コミュニケーションのツールだったのです。いっぽう現代では、私たちの前にはデータの海があり、だれもがその港となれるのです」と語りかけました。

参加した学生は、「将来何をするにしても英語は必須だと考えていて、他国の大統領のお話を直接うかがえるとても貴重な機会だと思い、自分の視野を広げるために参加しました。“将来を見据えて、いま何をなすべきかを考えることが大事”という考え方がとても印象的で、国をこえて共通することだと思いました」と話していました。

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