先進生命研コアプロジェクト「新規担癌ヒト化マウスモデルを用いた抗がん剤開発」(椎名隆医学部教授、亀谷美恵医学部客員准教授)の研究が、川崎市が主催するKawasaki Deep Tech Acceleratorおよび日本総研が主催するTokyo TCPの支援対象グループとして採択されました

 椎名隆教授らは2023年に、免疫系の抗がん剤開発に役立てることを目的として、NOG-hIL-4-Tgマウスという重度免疫不全マウスにヒト癌細胞株とヒト末梢血単核球を移植した担癌ヒト化マウスモデルを開発し発表しました。このマウスは、末梢血由来のヒトT細胞のみならずB細胞も生着し、抗原特異的な体液性免疫応答を生じることができるマウスであり、これにがん細胞を移植することで、担癌状態での個別のヒト免疫応答を解析することができる世界初のマウスです。また、椎名教授のグループは、妊娠免疫に基盤を置いた抗がん剤、抗PD-L1抗体結合プロゲステロン内包リポソームも開発し、担癌ヒト化マウスを用いてその有効性を証明しました(国際特許出願中)。これらの研究成果を広く創薬研究へと展開することを目的として、今回採択された2つの公共支援プログラムの支援のもとで、今後起業を行うことになりました。

 Kawasaki Deep Tech Acceleratorは川崎市が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と連携し、研究開発型ベンチャー企業の支援を行う一環のものです。大学・企業を活用して新規事業の立ち上げを目指す個人やベンチャー企業は、本プログラムにより、メンターによる伴走支援や投資家からの資金調達、公的機関からの競争的資金の獲得、事業会社との連携マッチングのサポート等を受けることができます。7月17日にはキックオフミーティング(写真)が開催され、株式会社ケイエスピーの主催するビジネススクールの学生とともに、今後の活動について説明を受け、メンバーの自己紹介が行われました。

 Tokyo TCPは日本総研が主催する、東京におけるTechnology Commercialization Program(TCP)として、起業を目指している、あるいは起業直後のグループに向けたメンタリングを行った上で、選ばれたグループにギャップファンドも提供するアクセラレーションプログラムです。こちらは7月18日にキックオフミーティングが行われました。

 今後、これらのプログラムによる支援を活用して、担癌ヒト化マウスおよび抗PD-L1抗体結合プロゲステロン内包リポソームの社会実装を目指します。

亀谷美恵客員准教授によるKawasaki Deep Tech Acceleratorでの発表の様子