公開シンポジウム「アニマルウェルフェアの現在~市場・法律・報道の観点から~」が開催されました

阿蘇くまもと臨空キャンパスで9月12日に、動物の行動と管理学会2024公開シンポジウム「アニマルウェルフェアの現在~市場・法律・報道の観点から~」が開催されました。11日から13日まで開かれた同学会2024年度大会の一部として企画されたものです。アニマルウェルフェア(AW)は、最終的に食べ(殺し)てしまう動物に対しても、生きている間のストレスや幸福に配慮する思想で、科学的に動物の状態を定量化して飼育環境を考える取り組みです。日本でも農林水産省がAWの考え方を踏まえた飼養管理の普及を推進し、昨年7月には新たな指針も公開されています。

学会の会員のほか、農学部の学生ら約100名が参加した当日は、初めに本シンポジウムのコーディネーターを務める農学部動物科学科の伊藤秀一教授が同学会の成り立ちやAWに対応した本キャンパスの動物舎などを紹介。続いて、沖縄県石垣市の黒島で黒毛和牛を自然放牧で育てる生産者の取り組みを調査し、消費者とつなぐ活動を進める東京工業大学環境・社会理工学院准教授の大橋匠氏が「持続可能なタンパク質供給システムに向けたトランジションデザイン~沖縄県黒島でのアクションリサーチを中心に」と題して講演しました。さらに、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科准教授の本庄萌氏は法律の視点から「EU動物福祉法の意義、課題、規範力」をテーマに語り、EUを中心に法整備の現状や課題を説明しました。また、朝日新聞社文化くらし報道部の太田匡彦氏は「新聞報道に見るアニマルウェルフェア」として、同社のデータベースから「動物愛護」や「AW」が紙面に登場した時期を解説。阪神淡路大震災や神戸連続児童殺傷事件、鶏卵汚職事件などによって世間のAWへの関心度が増したことにも触れ、「雪崩を打つように雰囲気が変わる可能性はゼロではありません。今後、AWが広がっていく可能性はあります」とまとめました。

その後は、伊藤教授の司会で会場も交えたディスカッションを実施。AWの研究や関連する仕事に就いたきっかけや、法整備、AWに配慮した商品の市場拡大に向けた課題といった質問が上がり、登壇した3名がそれぞれの立場から回答しました。